キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
高校2年生、いろんな意味ですべてが変わりそうだ。
「よろしいんですか…?わりと綺麗に伸びてますよ?」
「どうぞ!もうバッサリと!男の子にしちゃってくださいっ」
「わかりました。かっこ可愛くさせていただきますね」
「お願いしますっ」
パサリッ、パサリッ。
とくに伸ばしていたわけでもないセミロングが、美容師さんの手によって切り落とされてゆく。
「あとは~、これとこれっ、これも!」
次にメンズ服。
ユニセックスな服から一般のメンズ服まで、幅広くカゴに入れてはレジへ。
男の子、わたしは男の子。
レイヤーの入ったショートヘアーを跳ねさせて、何度も気合いを入れた。
「……これ、どうしよう」
それから帰宅し、落ち着いた頃。
とっくに洗濯済みのパーカーを手にしたわたしは、あの日を思い出す。
「助けてくれて…、腰に巻いてくれた銀髪の神様……」
もしかすると大切なパーカーだったのかもしれないのに。
泥だらけだったわたしのお尻を隠すように、彼は巻いてくれたのだ。