キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─




琥珀くんが手にしていたものは、最初の頃にずり落ちたサラシ。

わたしの黒歴史であり、2度と見たくないと放ってあった例のそれ。


ベッドの下にでもあったのだろうか、忙しく動いていたからかさばって出てきやがったのだろうか。



「そそそそれはっ、お父さんのでっ!!」


「……お父さん、こんなの着けるんだ」


「………うん」



ごめんよパッパ。

頭のなかで父と娘を作り、父に対して娘は土下座した。


すぐに琥珀くんの手から奪い返し、クローゼットの奥の奥へ放り投げる。


よりによって琥珀くんにサラシを見られちゃうなんて……。



「テレビ見る?土曜だし面白いのやってるかな!」



時刻は16時過ぎ。

外は雨ということもあって、どこか暗い雰囲気。

気分転換と思って付けたテレビは、ちょうどニュース番組だった。



《なんと!あの世界的に有名な歌姫であるSionさんに熱愛報道が!お相手はアメリカで有名な───》



ぶちっっっ。



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