キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─




実はわたし、Ark.のメンバーたちと高校生活を過ごしてたんだよって、さすがにそこは言えないけれど…。



「ふんふんふ~ん」



無意識に鼻歌が出てしまう。
その鼻歌も、もちろんArk.の曲だ。

寝る前、起きてから、準備している最中、いつもいつも聴いている。


基本はアップテンポなのに、なんていうかすごく心地がいいロック。



「郡さん、……ごめん」



琥珀くんお得意の「ごめん」が出た。

今までわたしは何回言われてきたかな。



「───……」



なにが起こっているんだろう。


テーブルに置かれたマグカップ、ふわっと昇る湯気。

だんだん薄くなっていく煙をぼうっと見つめることしか。


だってわたし今、頼くんじゃない人に抱きしめれちゃってる……。


そしてここに来てわたしは、彼が男の子だということを思い出した。



「…ごめん」


「……なに……が」


「…シュークリーム、……ごめん」



ずいぶんと懐かしい話だ。

わたしはようやく忘れることができて、頭にも置いてなかった。



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