キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
やっぱり慣れていない、精いっぱいな腕。
身体に回されたものはぎこちない。
「体育祭のときも……ごめん」
「………、」
「…いつも……、…ごめん」
冷たくして?
ひどいことたくさん言って?
背中ばかり向けて?
近づけたと思った瞬間、突っぱねて?
苦しい、くるしいよ琥珀くん。
やっぱりあなたからの「ごめん」は、苦しい。
なんで今なの。
なんで今になってそんなこと。
「…なに……言ってるんだよ、琥珀くん」
離して。
こんなことしなくていい。
もういいから、離していいんだよ。
ぜんぶぜんぶ、やっと、やっと乗り越えることができたんだから。
「もー、そんなの謝んなくていいって!」
琥珀くんの腕、そっと離す。
どんな腕の中なんだろうって知りたかった。
どんなふうに女の子と関わるんだろうって、どんな顔をするんだろうって。
いつもいつも妄想して、想像して、勝手に盛り上がって。
わたしにとって琥珀くんは、そこで止まってる人なんだよ。