キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
きれいすぎる指で撫でられる頬。
だめ、だめ、と言っているのに、今度はそこに重ねられた唇。
「いい加減にしろっ、こはく、くん…!」
どうしよう………、
からだ、まったく動かない。
よりくん、頼くん、よりくんがいい。
あのちょっと慣れてる感じがムッとするけど、形がなくなるくらい甘い頼くんのキス。
「────……僕を選んで」
変わらないシトラス、綺麗な声、銀色の髪。
あのときのわたしを戻して、泣かせてきて。
今度は涙を拭ってくれる。
ちがう、この人はわたしが好きになった神様じゃない。
こんな人じゃない。
こんな人じゃ、ないんだ。
わたしを見ているようで、まったく見ていないことが伝わってくる。
今だってシオンさんのことしか見てないの、わかるよ。
だってわたしはそんなあなたを見ていたんだから。
なんて馬鹿で最低な神様なの。
ぜんぶ、ぜんぶ、
ただただ、悲しかった───。