キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
逃げるようにそそくさと早歩きして行った女性。
呆然と立ちすくむわたしは、しばらくしてからハッと助けられたことに気づく。
「あ、ありがとう、…琥珀くん」
「まんまと引っ掛かるところだったよ」
「……あちらは……宗教ですか」
「逆に宗教じゃないと思う人のほうが珍しいと思う」
これは遠回しにアホの子だと。
この人もそう言いたいのか。
わたしは素早く頭を下げて、その場を退散しようとしたのに。
パシッと、腕が掴まれる。
「俺っ、琥珀くんとは友達でしかないから…!!」
なにがなんでもおでこ死守っ!!
頬っぺたも琥珀くんに貸すものなんか持ってないから…!!
「そっち逆方向」
「……えっ」
「また学校に戻るつもりなら…止めないけど」
「……戻らない」
スッと手が離される。
一定の距離感、強引など考えてもいないのだろう雰囲気。
わたしはやっぱりまともに顔を見ることはできず、とぼとぼと足を進める。
もちろん方向が同じ彼は、若干の斜めうしろを歩いてきた。