キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
「志音。いつか僕も……きみの隣に並ぶよ。自分の力で、立つよ」
僕にしか持っていないもの。
僕にしかないもの。
それだけを使って、僕もいつかは世界を目指す。
きみが見ている世界を、僕の目にも映してみせる。
「だから待ってて、志音。僕がそこに行くまで、待ってて」
サアッと、心地いい風が髪を撫でる。
すこし懐かしいパーカーに身を包んで、唇の端には幼なじみに殴られた跡。
ふっと目を閉じて、また開く。
「立派な男になって、きみを絶対に夢中にさせてみせる」
もう君に宛てたラブレターなんか書かない。
僕はこうして君には言葉で伝えて、もっともっと誰かの心を奮わせるような音楽を作る。
「志音…?泣いてるの…?変なこと、言ったかな僕」
『っ…、───…待ってるわ、琥珀』
「……うん。でも、たまには帰って来て。僕は今すぐにでも会いたいから」
『ふふ。琥珀、次のコンサートのVIP席…、あなたを招待したいの』
「行く。…もちろん行くよ」
たくさんのことを教えてくれた僕にとっての神様が作った、
────神藤学院高等学校で。