キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
キミはひみつの王子様。
「ああぁぁぁあああ動けこの足ぃぃぃぃ!!!」
走れ、走って、もうブレーキとかいらないから。
あっ、でも赤信号だったりはちゃんと止まろうぜカンナ。
琥珀くんに背中を向けて、全力疾走。
「頼くんっ、頼くんっ」
合コンなんかダメ。
あなた行ったら他のメンバーが雑草に変わっちゃうから。
ピリリリリリーーーー、
呼びベルはぜったい頼くんだと信じながら応答すれば、『カンナ、ちゃんとご飯は食べてる?』と、スマホ先はお母さんだった。
「お母さんっ、今ちょっと頼くんを…!」
『あら、御堂くんね~。ほんっとうに素敵な子よね~』
「そうなんだけどっ!そうなんだけどっ、そーいうことじゃなくて!!」
『夏休み、ふたりで花火に行ったじゃない?そのとき御堂くん、電話でお母さんにね』
赤信号じゃなかったけれど、足取りは止まった。
お母さんの声がすごく穏やかで嬉しそうだったのもあるけれど、実はその内容がずっと気になっていたから。