キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
「…でも、ちょっとそうなんじゃねーかなって思ってたわ」
「……え」
「去年の夏休みとか。おまえ古民家でさ、まさか殴るなんて予想外だったし。
でもそれ考えたらいよいよ俺やべえかなって思って、とくに考えないようにしてた」
意外だ。
超絶鈍感野郎だと思ってたのに、まさかのまさかだった。
薄々気づいていたにも関わらず、あえてそれ以上の詮索はしないように過ごしてくれていたのか。
「…ありがと、ムツミ」
「んあ?…べっつにー。俺もカンナに会えて楽しかったし」
うん、ほんと楽しかったよね。
まさか神藤学院がここまでひとつにまとまってくれるなんて、俺も思ってなかった。
廃校阻止だってそうだし、今年はバンドコースがいちばん新入生が多かったんだって。
あの歴史的な文化祭の影響かは、知らないけど。
「お、琥珀じゃん」
すると今度、また屋上に追加されたひとり。
ムツミが名前を呼ぶと、そいつはずっと俺たちを探していたのか向かってくる。