キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
「……なに?」
俺の前、じっと見下ろしてくる幼なじみ。
こいつを殴った日以来、俺は琥珀と話す機会が一段と減った。
もう幼なじみは終わってしまったんだ。
俺たちはただ昔から親睦があるってだけのクラスメイト、それだけ。
「頼、ムツミ」
改めて名前を呼ばれると、俺たちのあいだに爽やかな風が通った。
ほんと良い声してるよお前。
悔しいくらい。
お前なら志音が抜けたArk.でもカバーできるんじゃないかって、俺はずっと思ってた。
「僕とまた、Ark.を作ってほしい」
そう言って、琥珀は頭を下げた。
かつて解散という言葉を同じように言いつけてきたそいつが、今度は再結成を提案してくるだなんて。
さすがに怒っていいだろ俺は。
今更なんのつもり?って、怒ってもいいよね。
「残念だけど、おまえが大好きな志音はいないよ」
「頼とムツミと僕、3人でやりたいんだ」
「……なんで?」
「…僕の曲を演奏できるのは、ふたりしか居ない。僕の曲を演奏してほしいのだって、ふたりだけだから」