キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─




そういえば去年の文化祭でも。

Ark.を復活させることに対していちばん最初に動いたのはムツミだった。



「ムツミ。これから俺たちがまた痴話ゲンカ起こしたらさ、お前の一言で収まるだろうから。…って、おまえ泣いてんの?」


「…ほんとだ。泣いてる」


「うるっせ…っ、だってやっと、やっとっ、お前らの隣に立てた感じがして……っ」



ムツミの涙は初めてかもしれない。


さすがに戸惑った俺たちだったけど、ポケットティッシュをぎこちなくも差し出した琥珀。

俺は……とりあえず手にしてたパックジュース。


「カラじゃねーかっ!!」と、すぐに気づいたムツミ。



「ムツミ、ごめん。お前ほんとはArk.を誰よりも大切にしてたもんね」


「…ごめんムツミ。僕のせいで…ごめん」


「っ、もう2度と解散なんかにはさせねえからな…っ!なにがなんでも“方向性の違い”だなんてくだらねえ理由で解散なんかしねえからな!!リーダーの言うことちゃんと聞けよお前ら…!!」


「「うん」」



誰かさんのおかげだ。
ぜんぶぜんぶ、あのひみつの王子様の。


《新生Ark. 結成記念》


3人の男が笑顔で並んだ1枚を、俺はすぐに送信した。



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