キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
退学できるならそれはそれでいい精神なのか、逆にラッキーとまで言われてしまった。
どーするの神藤学院高等学校…!
このままだと本当に終わっちゃうよ…!?
「残念だったな郡くん!おととい来やがれよチービっ」
「…先生、あいつ誰。さっきからすごいムカつく」
人に指さしてくるし、大口を開けて笑ってくるし、あいつこそ小学生だ。
茶色髪をなびかせる短髪かりあげデコ出し、手にしているものはドラムスティックだろうか。
「あー、ムツミな。あいつは馬鹿だから放っとけ」
「…ムツミ、バカ、」
よし、覚えた。
ムツミはバカということだけ。
「だが、ドラムの腕前だけはこの学校イチなんだ」
そう言われて改めて見渡した教室を囲むのは、ギターケースから始まる楽器たち。
それはきっと彼らの命のようなものなんだろう。
「ムツミ、うるさいよ。いま映画みてんだから静かにして」
「あっ、わりーな頼(より)」