キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
びっくりしたのは、声。
あの日はいろんなことが混乱していて脳がまだ整理できていなかったけれど、ようやく整ったとき。
彼の声がすごく、それがもう神様だと思ってしまったことを思い出した。
女の子のものにも聞こえる、透き通った声をしているんだって。
「それからカンナ、休み時間はムツミにでも校内を案内してもらえ」
「だからなんで俺だっつーの!!」
「放課後は職員室な。転入手続きの書類だったり、いろいろ渡したいものがある」
「おいスルーかよ!!」
隣の席、神様。
会えたらいいな、会えるかな…なんて期待は、こんなにも簡単に叶えられてしまうとは。
たぶんだけどわたし、この人の横顔をずっと見ているだけで1日が終わっちゃうような気がする…。
「俺っ、郡 カンナ!今日から転校してきて…!よろしく!」
男の子で良かったと思ったのは、案外緊張せず話しかけることができたこと。
同じ性別、男同士。
そう思うだけで心はほんの少しだけ、気楽だった。