キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
まずはじめの第一歩
ちらっ、顔を覗かせる。
すっと、戻して。
………ちらっ、また顔を覗かせる。
すっと、また戻す。
ちらっと、またまた覗かせる。
「聞いたか?今日の体育の実技、アイドルコースの奴らと野球だってよ」
「まじかよー。また俺たちボロ負けだな」
「あー、やっぱ甘彩に行こうかなオレ。向こうは授業も選択制らしいし」
ドアの前、チラリチラリと、わたしはここ10分は己との何かと戦い続けていた。
登校してくるクラスメイトたちはそんなわたしを不思議そうに見つめ、「なにしてんだ転校生」と言ってくる。
が、わざわざ答えてあげるほどのメンタルなど持ち合わせていないのだ。
必死だ、もう必死なんだカンナは。
「頼くん、は……」
まだ来てないみたいだ。
琥珀くんはどうだろうと顔を伸ばしてみるが、ギリギリのところでクラスメイトが壁になってしまって見えない。
そんな男たちはとくに昨日と変わりなく、ギターを弾いては歌ったり、ビジュアル系バンドとやらを組んでいる男子なんかはメイクを研究していたり。