キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
どうしたらいいか分からなくなり頭がパニクると、なんとわたしは叫ぶという癖もあるらしいのだ。
「───頼」
そんなときだった。
透き通った高らかな声を放ちながら椅子から立ち上がった場所に、なんとひとりの神様が。
「…なに?琥珀」
「やめなよ。…郡さんが困ってる」
「え?俺べつになんもしてないけど」
サイレンのスイッチ、オフ。
いろんなことが頭のなかぐちゃぐちゃで、とりあえずいちばん嬉しかったことは。
初めて彼がわたしの名前を呼んでくれたこと。
「琥珀くん…!」
うそっ、ええっ、やったあ!
頼くんから逃げるように席に向かうと、だんだん見えてきた銀色さんは。
1メートル以内にまで近づいたところで確信に変わる。
「おはよっ!!今日も早いんだね!」
「……どうも」
琥珀くんの“どうも”は、なんて万能な挨拶なんだろう。
まさかまさかの2日連続でホームルームに揃っている、と。
また言わなくちゃいけないお礼が増えちゃったね。