キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
「……1年しかないのに」
こんなにも広いグラウンドにひとりだと、自分の影がものすごく小さなものに見えた。
生息するオオカミたちvsわたし。
自分が行おうとしていることは、課せられた使命は、かなり無謀すぎるものなんじゃないか。
こんなふうに、たまに、後ろ向きになってしまう。
「カンナ!頑張れカンナっ、男は背中で語るってやつだ…!」
パシッと頬っぺたを叩いて渇を入れる。
ぐっと握ったボール、変化球なんか投げられないわたしは、ど直球ストレートで攻めるしかない。
シュンッッ!!
「わっ、今まででいちばん速いの出た……!!」
待ってっ、
この速度で跳ね返ってきたボールなんか取れそうにないよわたし…!!
あの日の試合でピッチャー返しの球すらキャッチすることができなかったわたしは、実はそちらを練習したほうが良かったりする。
「わーー!魔球がくるぅぅぅ…っ」
向かってくるボールに対してキャッチする姿勢、ゼロ。
ぎゅっと目をつむって両腕を顔の前でクロスさせた───とき。