キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─




やっぱり見ていたんだね、頼くん。
ずっと見ててくれてたんだ。

わたしのことだけじゃなく、たぶん琥珀くんのことも。



『でも俺は、頼の優しさも好きだった』



いつかのムツミの言葉をわたしは思い出していた。


すごく、わかる。

ふたりの仲に何があるのかはまったく知らないけれど、わかる気がするよムツミ。



「だからさ、やろーよ練習」



繋がるようで、繋がらない。

琥珀くんをフォローしているのか、みんなを野球練習に参加させたいのか。


ずいぶんと無理やり繋げたような言葉だった。



「サチヤはわりと足速いし、タカは前の試合で盗塁ミスが無ければ1点取れてた。
あんなのタイミングと練習次第で直ることだからさ、とりあえず練習、みんなでやってみない?」


「…でも、バンド練習もしてーし、」


「お前のバンド、確かギターが絶望的なんだっけ?…俺が教えるよ、たまに」


「えっ、まじで…?」



< 97 / 377 >

この作品をシェア

pagetop