キミはひみつの王子様。─ようこそ、オオカミだらけの男子校へ─
やっぱり見ていたんだね、頼くん。
ずっと見ててくれてたんだ。
わたしのことだけじゃなく、たぶん琥珀くんのことも。
『でも俺は、頼の優しさも好きだった』
いつかのムツミの言葉をわたしは思い出していた。
すごく、わかる。
ふたりの仲に何があるのかはまったく知らないけれど、わかる気がするよムツミ。
「だからさ、やろーよ練習」
繋がるようで、繋がらない。
琥珀くんをフォローしているのか、みんなを野球練習に参加させたいのか。
ずいぶんと無理やり繋げたような言葉だった。
「サチヤはわりと足速いし、タカは前の試合で盗塁ミスが無ければ1点取れてた。
あんなのタイミングと練習次第で直ることだからさ、とりあえず練習、みんなでやってみない?」
「…でも、バンド練習もしてーし、」
「お前のバンド、確かギターが絶望的なんだっけ?…俺が教えるよ、たまに」
「えっ、まじで…?」