輪廻〜親愛ヴァンパイア〜
そんな意味など到底、私にあるわけないというのに。
“実家”に帰るため、みんな身支度を整えている。
どうでもいい。
私には帰る家も、戻る居場所もないのだから。
私が帰れば家の人はきっとガッカリするに違いない。
目下の者を差別し忌避し続ける。
あの家は、そういう人たちが集う場所なのだ。
できればこの先二度と、帰りたくないとさえ思ってしまう。
そんなこと、無理でも叶うわけがないのに。
一人の家に帰るのも嫌。
家族が揃った窮屈な家に帰るのも嫌。
肩身の狭い思いをすることが耐えられない。
それなら、いっそ前の生活に戻る方がマシかもしれない。
あの悪夢のような地獄を見ることの方が。
きっと、よっぽど……
憂鬱に感じながら、はたりと足を止める。
いいわけが、ないのに。
頭では分かっているつもりでも、心が、体が、全部が。
悲鳴をあげて、拒絶する。