輪廻〜親愛ヴァンパイア〜
だけど、どうして私の名前を知っている…?
得体の知れないものを見たかのような、恐怖が湧き上がってきていた。
どうして、私は震えているの?
伸びてきた手に、反射的に目を瞑るけど、彼は私の顔のすぐ横に手をついただけだ。
彼の左手はスラックスのポケットに沈んでいて、逃げられそうなのに何故か隙がない。
その顔は余裕たっぷりの笑顔を浮かべ、嫌みがましい。
「へぇ…。触れたんだ。
この首筋に、瑠架くんの牙が…さ」
冷たい感触。
横にあった手が首筋に移動してきたのが分かった。
ツツ…と指先が伝い、びくりと肩が跳ねる。
「あの人が狂うほど突き立てたんだってね、この柔肌に。
ああ…温かいなぁ…」
いつの間にか指先だけでなく、手の平全体で感じるかのようにぴたりと触れられていた。
彼はうっとりしたような表情で言葉を続ける。
「こうやって触れ合うだけで分かるよ。
君の血は甘くて、とっても魅力的。
この首筋から伝う鮮血はどれだけの美味なんだろうね。楽しみだよ」