輪廻〜親愛ヴァンパイア〜
「彼女に何をした」
底冷えするような声色。
瑠架が怒っている。
止めないと。
深門だけが悪いわけじゃない。
私が、彼を理解してあげられなかったから。
記憶が戻らなかったのは、私が気圧されていたからだ。
誰のことも信じられなかったから。
こうなってしまったのは、私が招いた結果なのだ。
「瑠架」
やめて、と手で制して押しのける。
深門は、離れたところで静かに涙を流していた。
どうしてなのか分からない。
彼を受け入れてあげられなかった私が彼に何かを言っても、それは同情にしかならない。
ただ彼を憐んでいるようにしか見えないだろう。
だから……
「アルニス」
一言、そう呼ぶと深門はゆっくりと私を見る。
まるで迷子になった幼い子供のようで、抱きしめてあげたい衝動に駆られる。
だけど、私が彼にしてあげられることなど何もない。