Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
悶々と一人で考えていたら、智くんがバスルームから出てきた。

白いバスローブを身に纏ったその姿は男の色気がダダ漏れている。

普段はスーツで気付かないが、意外と胸板が広くて男らしい。

ドライヤーをしたのだろうけどまだ少し髪が濡れていて、そんなところも可愛いかった。

(あぁ、ヤバイよ〜。心臓がバクバクしちゃう。こんな姿を見たら好きが溢れちゃいそうで怖い‥‥!あ、でも今は溢れてもいいんだった‥‥!)

私の頭の中は混乱状態に陥っている。

落ち着かせるため、そしてこれ以上あの色気に当てられてしまわないよう、私も交代で足早にバスルームに向かった。

ゆっくりとシャワーを浴び、この後どうしようかと思考を整理しようとする。

でも考えても考えても結局答えはないのだ。

(その場の流れ次第だよね‥‥!うん、もう考えすぎるのはよそう)

思考を放棄して、頭をすっからかんにすることにした私は、同じく白いバスローブを着て、髪を乾かし、スキンケアをする。

ひと通り身支度が整ったところでバスルームから出て、智くんのいるベッドルームに戻った。

智くんはベッドの近くにある椅子に腰をかけて、お酒を飲んでいるようだった。

「なに飲んでるの?」

「カルロヴィバリの水を使って作られたべべロフカっていうハーブリキュールのカクテルだよ」

「そんなリキュールがあるんだ。一口だけ味見させてもらってもいい?」

「どうぞ」

そう言われてグラスを受け取り、口に含んでみる。

ハーブリキュールだからか、薬草っぽい味わいがする爽やかな感じのカクテルだった。

過去の経験から、人から飲み物を受け取るのを警戒している私だが、この時は全く気にならなかった。

つまりはそれだけ智くんを信頼する人として認識しているからなのだろう。

(同居を始めた当初はコーヒーを淹れてもらうのも避けていたのに。この7ヶ月でずいぶん変わったんだな)

それだけ智くんの存在が私の中で大きくなっている証拠だった。

「まだお酒飲むよね?私、先にベッドに入らせてもらうね。ゆっくり楽しんで!」

まだグラスにお酒が残っている智くんをその場に残し、私はゴソゴソとベッドに潜り込む。

先に入ってしまえばなんとなく気が楽だ。

クイーンサイズのベッドだから2人で寝るには充分な広さがある。

距離を離せばそんなに意識せずに寝ることができるだろうと思った。

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