Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
ベッドに入り少しウトウトしていると、ベッドの軋む音が聞こえて、智くんが静かに隣に入ってきたことに気付く。
その瞬間、微睡んでいたのなんて吹っ飛んで、全身が隣にいる智くんを意識し出してしまった。
「環菜、もう寝たの?」
智くんに背中を向けた状態の私に、伺うような声のボリュームを抑えた声が聞こえた。
「‥‥まだ起きてるよ」
むしろ目が冴えてきてしまいましたと心の中で呟きながら答える。
すると智くんの腕が伸びてきて、ベッドの中で後ろから抱きしめられた。
背中に温かさを感じる。
「良かった。僕の婚約者は旅行に来てるのに僕をほったらかして先に寝てしまったのかと寂しくなったよ」
寂しいなんて言われると、まるで私ともっと一緒にいたかったと言われているようで、ドキッとしてしまう。
あくまで婚約者役の私への言葉なのは分かっているけど勘違いしそうだ。
「また環菜に印付けてもいい?僕の婚約者だっていう印」
「えっ?」
その言葉の意味を聞き返そうと、その体勢のまま頭だけ背後を振り返ると智くんと目が合った。
色っぽい目に見据えられ、頭の中が真っ白になった私は、近づいてきた唇を素直に受け入れる。
チュッと触れるだけだったキスは、次第に熱を帯びていき、気付けば後ろにいたはずの智くんは私の上に覆い被さっていて、首筋に顔を埋めていた。
予告通り、首筋に吸い付いて印を付けると、智くんの唇はさらに下へと肌を這っていく。
胸元まで降りてきたところで一瞬動きを止めて、智くんは確認するかのように私を見上げた。
「‥‥いい?」
その短い問いかけが何を意味しているのか私は理解している。
それはきっとただ単に印をつけていいかという問いではない。
(やっぱり思ってたとおりだ‥‥。こんなふうに好きな人に求められたら、これ以外の選択肢なんてないもんね‥‥)
私は声には出さず小さく頷いた。
これが婚約者役の一環だとしても拒否できないことなんて最初から分かっていたことだ。
私が頷くのを確認すると、智くんはバスローブの下に手を差し込み、私の肌に直接触れる。
唇も普段は服で隠れている部分へと降りていき、優しく舌で愛撫された。
甘い刺激に息が乱れ、声が漏れ出し、どんどん思考がとろけていく。
そこからはもう智くんが奏でる甘い行為にただただ身を委ねるだけだった。
演技でもなんでもない、彼を好きな私が溢れ出ているだけの時間だった。
幸せだと感じながら、一方で頭の片隅ではこれは【婚約者役】としての営みで、【婚約者役を頼まれた私役】に向けられたものではないと冷静に受け止める自分がいた。
その行為の快楽によって自然と浮かぶ生理的な涙を流しながら、智くんの腕の中で私は心の涙も一緒に流したのだったーー。
その瞬間、微睡んでいたのなんて吹っ飛んで、全身が隣にいる智くんを意識し出してしまった。
「環菜、もう寝たの?」
智くんに背中を向けた状態の私に、伺うような声のボリュームを抑えた声が聞こえた。
「‥‥まだ起きてるよ」
むしろ目が冴えてきてしまいましたと心の中で呟きながら答える。
すると智くんの腕が伸びてきて、ベッドの中で後ろから抱きしめられた。
背中に温かさを感じる。
「良かった。僕の婚約者は旅行に来てるのに僕をほったらかして先に寝てしまったのかと寂しくなったよ」
寂しいなんて言われると、まるで私ともっと一緒にいたかったと言われているようで、ドキッとしてしまう。
あくまで婚約者役の私への言葉なのは分かっているけど勘違いしそうだ。
「また環菜に印付けてもいい?僕の婚約者だっていう印」
「えっ?」
その言葉の意味を聞き返そうと、その体勢のまま頭だけ背後を振り返ると智くんと目が合った。
色っぽい目に見据えられ、頭の中が真っ白になった私は、近づいてきた唇を素直に受け入れる。
チュッと触れるだけだったキスは、次第に熱を帯びていき、気付けば後ろにいたはずの智くんは私の上に覆い被さっていて、首筋に顔を埋めていた。
予告通り、首筋に吸い付いて印を付けると、智くんの唇はさらに下へと肌を這っていく。
胸元まで降りてきたところで一瞬動きを止めて、智くんは確認するかのように私を見上げた。
「‥‥いい?」
その短い問いかけが何を意味しているのか私は理解している。
それはきっとただ単に印をつけていいかという問いではない。
(やっぱり思ってたとおりだ‥‥。こんなふうに好きな人に求められたら、これ以外の選択肢なんてないもんね‥‥)
私は声には出さず小さく頷いた。
これが婚約者役の一環だとしても拒否できないことなんて最初から分かっていたことだ。
私が頷くのを確認すると、智くんはバスローブの下に手を差し込み、私の肌に直接触れる。
唇も普段は服で隠れている部分へと降りていき、優しく舌で愛撫された。
甘い刺激に息が乱れ、声が漏れ出し、どんどん思考がとろけていく。
そこからはもう智くんが奏でる甘い行為にただただ身を委ねるだけだった。
演技でもなんでもない、彼を好きな私が溢れ出ているだけの時間だった。
幸せだと感じながら、一方で頭の片隅ではこれは【婚約者役】としての営みで、【婚約者役を頼まれた私役】に向けられたものではないと冷静に受け止める自分がいた。
その行為の快楽によって自然と浮かぶ生理的な涙を流しながら、智くんの腕の中で私は心の涙も一緒に流したのだったーー。