Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
「環菜‥‥」

抱きしめた身体を少し離して、環菜のぷっくりと柔らかい唇にキスをする。

そのまま貪るように唇を求めながら、ベッドの上に押し倒し、環菜を見下ろす体勢になる。

「んっ‥‥!ちょ、ちょっと待って‥‥」

「散々待ったよ。婚約者のフリしてる環菜じゃなく、環菜自身をずっと抱きたかった。悪いけど、もう待てないから」

「あ‥‥」

これ以上何も言えないように、唇で塞ぐと、もう環菜もそれ以上は何も言わず、僕たちはただお互いを求め合った。

あの旅行の時よりも、素直に反応して喘ぐ環菜にいちいち煽られ、理性はすっかり吹っ飛んでいた。

あの時も初めて感じる昂りに驚きながら行為に没頭したが、今日は気持ちの通じた相手と肌を重ねることの幸せを初めて実感した。

同じ行為でも、気持ちがあるだけで、こんなに愛しく感じて、こんなに溶けるような気持ち良さを感じるなんて。

(こんなのを知ったらもう手放せないな。まぁもう手放すつもりもないけど)


「‥‥あっ、はぁ、智くん‥‥!」

「環菜、愛してるよ」

「あ、あっ‥‥んんっ。私も愛してる‥‥!」


快感に喘ぎながら、僕の首に必死にしがみつく環菜が愛しくて愛しくてたまらなかった。

ギュッと抱きしめ、重なった肌の甘さに酔いしれる。

何度もお互いを求めながら、気持ちを確かめ合い、僕たちは甘い一夜を過ごしたのだった。




翌朝、目が覚めると、僕の横にはスヤスヤと眠る環菜がいた。

眠る顔はあどけない。

もっとこのままベッドの中で環菜を堪能していたいけど、そういうわけにもいない。

明日には日本へ立たなければならず、その準備に今日も忙しいのだ。

帰ったら荷物もまとめないといけない。

せっかく環菜と気持ちが通じ合ったばかりなのに、しばらく離れなければいけない状況を歯痒く感じた。

(早く仕事を終わらせて、帰ったらまた環菜を抱きしめて眠せてもらおう。しばらく会えないからチャージしとかないとね)

眠る環菜の髪を手ですいて、今までにない満たされた気持ちを感じながら、名残惜しくも出掛ける準備をして僕は家を出た。
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