Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
「いや〜、どこの国の政治家もなかなか一筋縄ではいかない人ばかりだな。相変わらず腹の探り合いにヒヤヒヤするわ」

「政治家なんてそんなもんだよ。こちらも痛い腹を探られないように注意しないとね」


生ビールを飲み交わしながら、国際会議のことについてお互い情報共有をする。

ついでに外務省の共通の知人について、今誰がどこにいる等、人事についても話をした。

「お前もそろそろチェコは終わりじゃない?日本に呼び戻される可能性高いと思うぞ。しばらく日本にいて、たぶんまたすぐヨーロッパのどっかだろうけどな」

「そういう新谷は、そろそろまたアフリカの方かもな」

外交官はこうやって日本と海外を飛び回る働き方のため、婚期を逃しがちだ。

同年代は結婚して子供もいる人が多くなってきているが、新谷も僕も31歳にしてまだ独身だった。

「そういえば、お前の婚約者は?一緒に来てないの?」

「‥‥来てない。プラハにいるよ」

今一番触れられたくない話題だったが仕方ない。 

適当に嘘を交えつつ、切り抜けるように受け流す。

「いいなぁ。俺も可愛い彼女が欲しい。合コンとかには学生時代の友達に誘われてたまに行くけどサッパリだわ。俺って面食いだからさ」

そう嘆く新谷は確かに女性の容姿を気にするタイプだった。

本人曰く、顔が好きじゃないと、女性として意識できないのだそうだ。

(まぁ分からないでもないけど。環菜も容姿端麗だし、そこに全く惹かれなかったかと言われれば嘘になるだろうしな。もちろん外見だけで好きになったわけではないけど)

自然と環菜のことを考えてしまい、僕はその思考を打ち消すかのように、新谷に問いかける。

「前からそう言ってたけど、ちなみにどんな容姿の女性が好みなの?」

そういえば新谷の過去の彼女は話には聞くが見たことがなく、単純な興味で気軽な気持ちで聞いてみた。

すると新谷はよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに目をキラッと輝かせると、ニンマリと笑う。

「お!桜庭が俺に興味を持ってくれるなんて嬉しいじゃないか!俺の好みはな、ここ数年だとこの子がドンピシャ!ほれ、これ写真」

そう言いながらスマホでなにやら検索して、ある写真を僕の方に提示するように掲げて見せる。

ビールを口に含みながら、そちらに視線を向けると、目に入ってきた写真に釘付けになった。
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