Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
新谷はネットで環菜がかつて所属していた事務所を調べて教えてくれながら、そう聞いてきた。
僕には一つ心当たりがあったのだ。
先日プラハで会ったあの知的な雰囲気の日本人男性だ。
彼はおそらく環菜が女優をしていた時の事務所関係者だろう。
親しげな感じだったから担当マネージャーだったのかもしれない。
彼であれば、ネットニュースに出ている以上の詳しい情報を知っているはずだと思った。
誰の仕組んだことだったかまで分かれば、どう手を打つかを検討しやすい。
事務所に訪ねれば会えるだろう。
「思わぬ収穫だったよ。まさか新谷からこんな有益な情報を得られるとはなぁ」
「俺こそ驚きだったよ。お前のことだから何か企んでるんだろうけど、もし俺で役に立つことがあれば言ってくれよ。あと、今度絶対に亜希ちゃんに会わせて!」
「本人がいいって言ったらね」
にっこり笑ってそう返しておいた。
好みのタイプにドンピシャだと言うくらいだから、会わせたら新谷は鼻の下を伸ばしてデレデレしそうだと思った。
その数日後、国際会議は無事終了し、各国の要人たちは自分達の国へ帰国していった。
僕はもうしばらく日本に滞在して、外務省で会議の事後処理をすることになっている。
国際会議開催中に比べると、少し落ち着いたと言えるだろう。
仕事の合間をぬって時間を作り、僕は例の芸能事務所に訪れていた。
事前に電話を入れ、「神奈月亜希について話したいことがあるから、当時マネージャーだった人と会わせて欲しい」とアポを取っておいたのだ。
僕が外務省の人間であることを名乗ると、政府関係者には逆らわないようにしているのか、すんなりとアポを得ることができた。
事務所の受付でアポイントの旨を伝えると、しばらくして男性が現れる。
やはり思った通り、プラハで一度会った、情報を取り扱うことに長けたあの男性だった。
彼は僕を見ると驚いて目を丸くしている。
「あの、外務省の桜庭さんですか?」
「はい、そうです。以前はどうも。やはりあなたでしたね」
「やっぱりあの時の!外務省の方だったんですね、驚きました。とりあえず、ここではなんですから、こちらへどうぞ」
応接室へ案内され、僕たちは革張りの上等なソファーに腰をおろす。
しばらくすると女性がコーヒーを持ってきてテーブルに置いて部屋を出ると、彼と僕の2人だけとなった。
「突然すみません。改めて僕は桜庭と申します」
「皆川です。よろしくお願いします」
名刺を交換しながら挨拶を交わす。
お互いにコーヒーを一口飲むと、本題を切り出し始めた。
「皆川さんは、環菜、いえ、神奈月亜希さんの元マネージャーだということで合っていますか?」
「ええ、そうです。僕が亜希を街でスカウトして、これまで二人三脚でやってきました。プラハでお会いした時は、亜希が女優だったことをご存知ないようだったので、話すのを避けたのです」
「素晴らしいご判断だったと思いますよ。現に、あの時は僕は何も知りませんでしたから。神奈月亜希さんが起こしたというスキャンダルも」
そう言うと、スキャンダルという言葉に皆川さんは悔しそうに少し唇を噛んでいる。
その様子を見て、やはり彼も事実を知っているのではないかという疑惑が確信へと変わる。
僕には一つ心当たりがあったのだ。
先日プラハで会ったあの知的な雰囲気の日本人男性だ。
彼はおそらく環菜が女優をしていた時の事務所関係者だろう。
親しげな感じだったから担当マネージャーだったのかもしれない。
彼であれば、ネットニュースに出ている以上の詳しい情報を知っているはずだと思った。
誰の仕組んだことだったかまで分かれば、どう手を打つかを検討しやすい。
事務所に訪ねれば会えるだろう。
「思わぬ収穫だったよ。まさか新谷からこんな有益な情報を得られるとはなぁ」
「俺こそ驚きだったよ。お前のことだから何か企んでるんだろうけど、もし俺で役に立つことがあれば言ってくれよ。あと、今度絶対に亜希ちゃんに会わせて!」
「本人がいいって言ったらね」
にっこり笑ってそう返しておいた。
好みのタイプにドンピシャだと言うくらいだから、会わせたら新谷は鼻の下を伸ばしてデレデレしそうだと思った。
その数日後、国際会議は無事終了し、各国の要人たちは自分達の国へ帰国していった。
僕はもうしばらく日本に滞在して、外務省で会議の事後処理をすることになっている。
国際会議開催中に比べると、少し落ち着いたと言えるだろう。
仕事の合間をぬって時間を作り、僕は例の芸能事務所に訪れていた。
事前に電話を入れ、「神奈月亜希について話したいことがあるから、当時マネージャーだった人と会わせて欲しい」とアポを取っておいたのだ。
僕が外務省の人間であることを名乗ると、政府関係者には逆らわないようにしているのか、すんなりとアポを得ることができた。
事務所の受付でアポイントの旨を伝えると、しばらくして男性が現れる。
やはり思った通り、プラハで一度会った、情報を取り扱うことに長けたあの男性だった。
彼は僕を見ると驚いて目を丸くしている。
「あの、外務省の桜庭さんですか?」
「はい、そうです。以前はどうも。やはりあなたでしたね」
「やっぱりあの時の!外務省の方だったんですね、驚きました。とりあえず、ここではなんですから、こちらへどうぞ」
応接室へ案内され、僕たちは革張りの上等なソファーに腰をおろす。
しばらくすると女性がコーヒーを持ってきてテーブルに置いて部屋を出ると、彼と僕の2人だけとなった。
「突然すみません。改めて僕は桜庭と申します」
「皆川です。よろしくお願いします」
名刺を交換しながら挨拶を交わす。
お互いにコーヒーを一口飲むと、本題を切り出し始めた。
「皆川さんは、環菜、いえ、神奈月亜希さんの元マネージャーだということで合っていますか?」
「ええ、そうです。僕が亜希を街でスカウトして、これまで二人三脚でやってきました。プラハでお会いした時は、亜希が女優だったことをご存知ないようだったので、話すのを避けたのです」
「素晴らしいご判断だったと思いますよ。現に、あの時は僕は何も知りませんでしたから。神奈月亜希さんが起こしたというスキャンダルも」
そう言うと、スキャンダルという言葉に皆川さんは悔しそうに少し唇を噛んでいる。
その様子を見て、やはり彼も事実を知っているのではないかという疑惑が確信へと変わる。