Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
私は女優の道に進む前の大学2年の時にカナダに1年間留学していて、カタリーナは同じくチェコからの留学生だった。

同い年の私たちはすぐ意気投合し、カナダでの1年間を共に過ごした。

それぞれの国に帰国後はたまにメールで連絡を取り合うくらいになっていたが、今でも縁が続いている。

懐かしい友達からの連絡に、張り詰めていた心が温かくなる。

“Hi. Thank you for the message! Actually, nothing is going well….I feel like my heart is going to break.I'm suffering...(連絡ありがとう!実は何もかもうまくいかないの。もう心が折れそうだよ。とっても辛い‥‥)”

溜め込んでいた想いが膨れ上がり、旧友からの連絡で緩んだ私は思わずポロッと弱音を吐いた。

いつも負けん気が強い私を知っているカタリーナは、私に何か起こっていることを察したのだろう。

メッセージを送ったあと、すぐに電話がかかってきた。

“Kanna! Are you okay!?What happened to you?(環菜、あなた大丈夫!?何があったの?)”

私はスキャンダルには触れずに、トラブルに巻き込まれて仕事を辞めることになったことなどの事実を話した。

“It's over. I'm so tired of everything…(もう終わりなの。何もかもに疲れちゃった‥‥)”

そう私が最後に溢すと、カタリーナは真剣な声で私を諭すように口を開く。

“It must have been hard for you.I don't know what happened exactly , but all I can say is that I'll always be on your side.(それは大変だったね。正確に何があったのかは知らないけど、ただ一つ言えるのは、私はいつも環菜の味方だよっていうことだけよ)

“Catalina….(カタリーナ)”

カタリーナの励ましが胸に染みる。

利害関係なく、心から私のことを思って言ってくれる言葉は大きく私の心に響いた。

そこで、カタリーナはふと思いついたように明るい声を上げた。

“You said you have to look for new place, right? Why don’t you come over to my place in Prague? (新しく住むところ探さなきゃって言ってたよね?それならプラハの私のところに来ない?)”

話を聞くと、カタリーナが住むプラハの家には、今は部屋に空きがあって居候できるらしい。
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