Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
パニック状態に陥っていると、それを察したのか智くんが説明してくれる。
「環菜の元マネージャーの皆川さんとも協力して、あの時の証拠を掴んだんだよ。それをもとに千葉真梨花と協力した男の2人は訴えておいたから。それに、プラハに来た記者には、名誉毀損で訴えることをチラつかせて、真実の記事を書いてもらうことになったんだよ。だから環菜はもう何も心配しなくていいってこと」
「なっ‥‥!いつの間に!?」
「環菜は終わった女優だっていうけど、環菜が望めばまたやり直せるよ。演じることが好きなんでしょ?」
「‥‥!」
怒涛の展開にただただ驚くだけだった。
この語り口からすると、たぶん智くんが色々手を回してくれたのだろう。
三上さんの時のことを思い出して、その手腕の鮮やかさに納得してしまう。
「さぁ、これで環菜があげてた2つは解決したよね。あと、僕と入籍することのメリットだけど、まず結婚すれば環菜は配偶者としてビザが下りるよ。そうすれば期間の定めなく、僕がプラハにいる限りは住めるし、助かるでしょ?今の環菜のビザは3月には切れるけど、まだ日本に帰りづらいだろうから」
全くその通りだった。
たとえスキャンダルのことが落ち着いたとしても、まだ日本に帰って人目を受けるのは怖かったのだ。
「あとは僕と結婚すれば、女優としてイメージ回復の一助になると思うよ。男遊びしてたって叩かれたけど、実は真剣な恋人がいて結婚しましたってなれば、人の目は変わるだろうし。辛い時期に支えてくれたとか美談も付加すればイメージ戦略的には効くと思うんだよね。相手が外交官っていうのもまともそうな人って印象を与えるだろうし」
「な、なるほど‥‥」
ものすごく客観的に考察され、それが確かにその通りだったから思わず納得してしまった。
「どう?納得してくれた?」
「うん、そうだね」
「じゃあ、僕との結婚を引け受けてくれる?」
きれいな目に見つめられ、確認するように問いかけられる。
同時に智くんから手を差し出された。
これはデジャヴだろうか。
この流れに既視感を覚えて、あぁこれは婚約者役を頼まれた時と同じ流れなんだと思い至る。
でも今度は《《婚約者役》》のオファーではなく、《《本当の結婚相手》》としてのオファーだった。
あの時と流れは同じだけど、向かい合う私たちの距離、言葉遣い、態度、気持ち、すべてが違っていた。
(やっぱり私は智くんが好き‥‥!これからもずっと一緒にいたい!彼が私でいいと言ってくれるんだったら、この胸に飛び込みたい‥‥!)
「喜んで‥‥!」
私は差し出された智くんの手を握り返す。
握手をするのかと思ったら、そのまま手をグイッと引かれて、次の瞬間には彼の胸の中に私は飛び込む形となっていた。
ギュッと抱きしめられ、耳元で囁かれる。
ーー「捕まえた以上、僕はもう絶対に離さないから」と。
「環菜の元マネージャーの皆川さんとも協力して、あの時の証拠を掴んだんだよ。それをもとに千葉真梨花と協力した男の2人は訴えておいたから。それに、プラハに来た記者には、名誉毀損で訴えることをチラつかせて、真実の記事を書いてもらうことになったんだよ。だから環菜はもう何も心配しなくていいってこと」
「なっ‥‥!いつの間に!?」
「環菜は終わった女優だっていうけど、環菜が望めばまたやり直せるよ。演じることが好きなんでしょ?」
「‥‥!」
怒涛の展開にただただ驚くだけだった。
この語り口からすると、たぶん智くんが色々手を回してくれたのだろう。
三上さんの時のことを思い出して、その手腕の鮮やかさに納得してしまう。
「さぁ、これで環菜があげてた2つは解決したよね。あと、僕と入籍することのメリットだけど、まず結婚すれば環菜は配偶者としてビザが下りるよ。そうすれば期間の定めなく、僕がプラハにいる限りは住めるし、助かるでしょ?今の環菜のビザは3月には切れるけど、まだ日本に帰りづらいだろうから」
全くその通りだった。
たとえスキャンダルのことが落ち着いたとしても、まだ日本に帰って人目を受けるのは怖かったのだ。
「あとは僕と結婚すれば、女優としてイメージ回復の一助になると思うよ。男遊びしてたって叩かれたけど、実は真剣な恋人がいて結婚しましたってなれば、人の目は変わるだろうし。辛い時期に支えてくれたとか美談も付加すればイメージ戦略的には効くと思うんだよね。相手が外交官っていうのもまともそうな人って印象を与えるだろうし」
「な、なるほど‥‥」
ものすごく客観的に考察され、それが確かにその通りだったから思わず納得してしまった。
「どう?納得してくれた?」
「うん、そうだね」
「じゃあ、僕との結婚を引け受けてくれる?」
きれいな目に見つめられ、確認するように問いかけられる。
同時に智くんから手を差し出された。
これはデジャヴだろうか。
この流れに既視感を覚えて、あぁこれは婚約者役を頼まれた時と同じ流れなんだと思い至る。
でも今度は《《婚約者役》》のオファーではなく、《《本当の結婚相手》》としてのオファーだった。
あの時と流れは同じだけど、向かい合う私たちの距離、言葉遣い、態度、気持ち、すべてが違っていた。
(やっぱり私は智くんが好き‥‥!これからもずっと一緒にいたい!彼が私でいいと言ってくれるんだったら、この胸に飛び込みたい‥‥!)
「喜んで‥‥!」
私は差し出された智くんの手を握り返す。
握手をするのかと思ったら、そのまま手をグイッと引かれて、次の瞬間には彼の胸の中に私は飛び込む形となっていた。
ギュッと抱きしめられ、耳元で囁かれる。
ーー「捕まえた以上、僕はもう絶対に離さないから」と。