Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
「まずプラハに戻る日だけど、明日でいい?日本からストラスブールに直接来たから、仕事の都合でプラハに早めに戻りたくて」

「それなら先に帰る?」

「それは何か不安だから嫌だ。また消えてしまいそうだから。僕にトラウマを植え付けた環菜が悪いね」

「ううっ‥‥!明日でいいです」

「入籍はいつにしようか?帰ってすぐでもいいけど」

「ご両親に挨拶とかはいいの?」

「反対されることはまずないから大丈夫。テレビ電話で一度ちょっと話してくれればいいよ」

「そうなの?分かった」

「じゃあ両親へのテレビ電話での紹介が終わり次第、入籍ってことにしよう。近いうちに指輪も見に行こうね」

「指輪‥‥」

どんどん話が具体的になってきて、ちょっとずつ実感が湧いてくる。

流れに身を任せていれば、気づいたら結婚していそうだなと思った。

(でもそれも全然嫌じゃなく、むしろ嬉しいんだけどね!)

「それと環菜の仕事のことだけど‥‥。環菜、また女優をする気はないの?」

「えっ‥‥」

「だって演じること好きでしょ。演技力もあるのにもったいないと思うよ」

「でも、いくらスキャンダルの件が多少マシになったとしても、今さら日本で女優は難しいと思うんだよね‥‥」

「続けたい気持ちはあるんだよね?」

「それは‥‥」

私が言い淀んでいると、智くんは私の頭をなでなでと撫でてから言った。

「とりあえず、プラハに帰ったら紹介したい人がいるんだ。その人たちに会ってからもう一度考えてみればいいと思うよ」

「紹介したい人?誰?」

「それは帰ってからのお楽しみということで」

それ以上は教えてくれず、私が何か聞こうとすると、その言葉を飲み込むように口を塞がれた。

久しぶりの智くんとのキスは、とっても心地よくって、私ももう何も言えなくなってしまった。

ただ目を閉じて智くんを感じるように、その口づけに応える。

それが深く熱を帯びたものになってくると、智くんがポツリと私に問う。

「環菜、していい?」

その言葉が何を意味しているのかは分かったけど、今日はおばあさんも近くの部屋にいるし、一緒にベッドで眠る以上のことはないと思っていた私は驚く。

「えっ?でもおばあさんもいるし‥‥」

「うん。だから環菜は声我慢してね?」

「‥‥!」

そのまま敏感な部分に触れられ、どんどんとろけていってしまった私は抵抗することもできず、必死に声を押し殺した。



いつもより狭いベッドの上で。

私は甘い甘い聖夜を過ごしたのだったーー。
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