Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
#28. 巡ってきたチャンス
「み、皆川さん!?どうしてまたプラハに!?」
店内に私の驚いた声が響き渡る。
年が明けた1月下旬、私はアルバイトをしていたあのクロワッサンの美味しいカフェにいる。
今日は仕事ではなく、お客さんとして智くんと一緒に来ていてテーブル席に座っていた。
そこにプラハにいるはずがない人物、元マネージャーの皆川さんが現れたのだったーー。
あのクリスマスの後、日々は流れるように目まぐるしく過ぎていった。
智くんがストラスブールに来た翌日には、おばあさんに、心を込めて選んだクリスマスプレゼントを渡しながら、短期間ではあったけどたくさんお世話になったことに感謝を伝えた。
プレゼントを喜んでくれたおばあさんは、「またぜひ来てね」と最後まで温かい言葉をくれた。
ただ、「聖なる夜は熱い夜だったみたいだね」とコソッと耳元で冷やかされた時には、穴に入ってしまいたいくらい恥ずかしかったけど。
そしてストラスブールからプラハに戻ると、もうそこからは智くんの鮮やかな手際にただただ翻弄されるだけだった。
家に帰るやいなや、「婚姻届を完成させたい」と言われて未記入だった私側の欄を記載する。
すると、「結婚するんだから、もちろん部屋は一緒だよね」と笑顔で言われて、その日から私たちは毎日一緒のベッドで寝るようになった。
さらに、テレビ電話でご両親とお会いして結婚の承諾を得ると、指輪を買いに行ってお互いの左手の薬指にはめるようになり、婚姻届は智くんが大使館で受理する手続きをササっと終えてしまった。
気付けば、私は《《桜庭環菜》》となっていたのである。
「これでいいのかな?」と一瞬も考えたり不安になったりする暇なく、結婚していたのだ。
マリッジブルーとは無縁の結婚だった。
そしてこの間に、智くんが言っていた例の記事も公開された。
【衝撃!月9女優が犯罪に手を染め後輩女優を餌食に。神奈月亜希は悲劇の女優だった!】という見出しで週刊誌に載ったのだ。
ワイドショーでも特集され、ネットニュースやSNSでも情報が拡散され、現役女優・千葉真梨花の悪行が世に知れ渡った。
それとともに、私のスキャンダルは誤報だったことも広く知られ、「可哀想」と同情が集まり悪いイメージは払拭されつつあるようだった。
もう以前のような悪意は向かないだろうし、逃げ隠れしなくて良いと思うとホッとする。
同時に、千葉真梨花のマネージャーだった皆川さんは大丈夫かなと心配した矢先のことだった。
店内に私の驚いた声が響き渡る。
年が明けた1月下旬、私はアルバイトをしていたあのクロワッサンの美味しいカフェにいる。
今日は仕事ではなく、お客さんとして智くんと一緒に来ていてテーブル席に座っていた。
そこにプラハにいるはずがない人物、元マネージャーの皆川さんが現れたのだったーー。
あのクリスマスの後、日々は流れるように目まぐるしく過ぎていった。
智くんがストラスブールに来た翌日には、おばあさんに、心を込めて選んだクリスマスプレゼントを渡しながら、短期間ではあったけどたくさんお世話になったことに感謝を伝えた。
プレゼントを喜んでくれたおばあさんは、「またぜひ来てね」と最後まで温かい言葉をくれた。
ただ、「聖なる夜は熱い夜だったみたいだね」とコソッと耳元で冷やかされた時には、穴に入ってしまいたいくらい恥ずかしかったけど。
そしてストラスブールからプラハに戻ると、もうそこからは智くんの鮮やかな手際にただただ翻弄されるだけだった。
家に帰るやいなや、「婚姻届を完成させたい」と言われて未記入だった私側の欄を記載する。
すると、「結婚するんだから、もちろん部屋は一緒だよね」と笑顔で言われて、その日から私たちは毎日一緒のベッドで寝るようになった。
さらに、テレビ電話でご両親とお会いして結婚の承諾を得ると、指輪を買いに行ってお互いの左手の薬指にはめるようになり、婚姻届は智くんが大使館で受理する手続きをササっと終えてしまった。
気付けば、私は《《桜庭環菜》》となっていたのである。
「これでいいのかな?」と一瞬も考えたり不安になったりする暇なく、結婚していたのだ。
マリッジブルーとは無縁の結婚だった。
そしてこの間に、智くんが言っていた例の記事も公開された。
【衝撃!月9女優が犯罪に手を染め後輩女優を餌食に。神奈月亜希は悲劇の女優だった!】という見出しで週刊誌に載ったのだ。
ワイドショーでも特集され、ネットニュースやSNSでも情報が拡散され、現役女優・千葉真梨花の悪行が世に知れ渡った。
それとともに、私のスキャンダルは誤報だったことも広く知られ、「可哀想」と同情が集まり悪いイメージは払拭されつつあるようだった。
もう以前のような悪意は向かないだろうし、逃げ隠れしなくて良いと思うとホッとする。
同時に、千葉真梨花のマネージャーだった皆川さんは大丈夫かなと心配した矢先のことだった。