Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
「環菜、どうしたの?」
いつの間にか智くんと皆川さんの電話は終わっていたらしい。
ぼーっとしていた私の顔を覗き込むように声をかけられ、ハッと意識を取り戻す。
「正直、急に日本でもてはやされて戸惑ってる‥‥」
「逆輸入女優みたいな感じだね。最近はネットが台頭してるからこその出来事だと思うよ」
「またあの時みたいに、急に周囲から手のひら返されたらって思うとちょっと怖いのもあるの‥‥」
嬉しい反面、困惑する気持ちを吐露する。
すると、智くんが私を宥めるようにヨシヨシと頭を撫でてくれた。
「環菜は環菜らしく、大好きな演技をただ楽しめばいいよ。色んなオファーが来てるってことは、それだけ色々な役に挑戦できるチャンスだって考えれば?」
「確かに。清純派っていうレッテルももうないし、自分の演じたいものを演じる機会ではあるよね‥‥!」
「そうそう。仮にもしまた日本が息苦しくなれば、別に日本に留まる必要ないよ。世界は広いし、選択肢は無数にあるんだから。それに‥‥」
「それに?」
「どこでなにがあったとしても、誰に何を言われたとしても、環菜には僕がいるから。僕のいる場所が環菜の帰るところなんでしょ?」
「智くん‥‥!」
その言葉に胸がいっぱいになる。
この人は私が欲しい言葉を的確に与えてくれて、いつも背を押してくれるのだ。
嬉しさのあまり、私は襲いかかるように智くんをベッドに押し倒してギュッとくっついた。
約3年前のスキャンダルで心身共にボロボロになった私。
友達の勧めで逃げるように日本を飛び出し、プラハで新しい人生をやり直し始めた。
日本という狭い世界だけが全てだと思って生きてきた私は、外に出ることで広い世界を知ることができたし、日本人とは価値観の違う人々との交流で自分自身を見つめ直すことにも繋がった。
最初はただ演じたいという欲求に従って始めた偽りの婚約者生活は、いつしか本当の恋となり、そして彼は最愛の旦那様となった。
自分の居場所、自分の帰る場所を見つけて、私は今、本当に自分らしく生きることができている。
誰にでも苦しい時はある。
人生をやり直したいと思う時もある。
長い人生、きっと私にもそういう時はまたやってくるだろう。
でもそんな時には、目の前だけを見るのではなく、また外にも目を向けてみようと思う。
外に逃げることは負けでもなんでもない。
心を守るために逃げて、心に栄養が行き渡ったらまたやり直せばいいのだから。
そうやって、私はこれからも自分らしく生きていくのだ。
最愛の伴侶と一緒に。
〜END〜
いつの間にか智くんと皆川さんの電話は終わっていたらしい。
ぼーっとしていた私の顔を覗き込むように声をかけられ、ハッと意識を取り戻す。
「正直、急に日本でもてはやされて戸惑ってる‥‥」
「逆輸入女優みたいな感じだね。最近はネットが台頭してるからこその出来事だと思うよ」
「またあの時みたいに、急に周囲から手のひら返されたらって思うとちょっと怖いのもあるの‥‥」
嬉しい反面、困惑する気持ちを吐露する。
すると、智くんが私を宥めるようにヨシヨシと頭を撫でてくれた。
「環菜は環菜らしく、大好きな演技をただ楽しめばいいよ。色んなオファーが来てるってことは、それだけ色々な役に挑戦できるチャンスだって考えれば?」
「確かに。清純派っていうレッテルももうないし、自分の演じたいものを演じる機会ではあるよね‥‥!」
「そうそう。仮にもしまた日本が息苦しくなれば、別に日本に留まる必要ないよ。世界は広いし、選択肢は無数にあるんだから。それに‥‥」
「それに?」
「どこでなにがあったとしても、誰に何を言われたとしても、環菜には僕がいるから。僕のいる場所が環菜の帰るところなんでしょ?」
「智くん‥‥!」
その言葉に胸がいっぱいになる。
この人は私が欲しい言葉を的確に与えてくれて、いつも背を押してくれるのだ。
嬉しさのあまり、私は襲いかかるように智くんをベッドに押し倒してギュッとくっついた。
約3年前のスキャンダルで心身共にボロボロになった私。
友達の勧めで逃げるように日本を飛び出し、プラハで新しい人生をやり直し始めた。
日本という狭い世界だけが全てだと思って生きてきた私は、外に出ることで広い世界を知ることができたし、日本人とは価値観の違う人々との交流で自分自身を見つめ直すことにも繋がった。
最初はただ演じたいという欲求に従って始めた偽りの婚約者生活は、いつしか本当の恋となり、そして彼は最愛の旦那様となった。
自分の居場所、自分の帰る場所を見つけて、私は今、本当に自分らしく生きることができている。
誰にでも苦しい時はある。
人生をやり直したいと思う時もある。
長い人生、きっと私にもそういう時はまたやってくるだろう。
でもそんな時には、目の前だけを見るのではなく、また外にも目を向けてみようと思う。
外に逃げることは負けでもなんでもない。
心を守るために逃げて、心に栄養が行き渡ったらまたやり直せばいいのだから。
そうやって、私はこれからも自分らしく生きていくのだ。
最愛の伴侶と一緒に。
〜END〜