Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
『ここは好きに使っていいから。自分の家みたいにくつろいでね!』

『ありがとう、カタリーナ!』


日本から飛行機に乗り、ロンドンで乗り換えて、ようやくここプラハに辿り着いた。

長時間フライトに疲れ果てながらプラハの空港に着くと、カタリーナが車で迎えに来てくれていた。

私たちは久しぶりの再会に喜び、ハグをする。

そのあと車に乗り込み、カタリーナの住む家にやってきて、ちょうど今は家の中を案内してもらっていたところだった。



カタリーナが住む家は、プラハの中心地からほど近い広めのアパートだ。

親が所有する物件らしく、カタリーナは自由に使っているらしい。

カナダに留学中もなんとなく感じてはいたが、カタリーナは結構お嬢様のようだ。

私はアパート内にあるゲストルームで一時的に居候させてもらうことになった。

ゲストルームは充分な広さで、トイレやバスルームも併設されているプライベート空間だ。

リビングとキッチンはカタリーナと共同で使うことになるらしい。


『私、日中は仕事でいないし、本当に気兼ねなくね!まぁ私と環菜は前にも一緒に住んでたし分かってるだろうけど』

そう、私とカタリーナはカナダに留学中もシェアハウスで一緒に暮らしていたことがあった。

懐かしい記憶が蘇ってきて、思わず笑顔が溢れる。

茶目っ気たっぷりに話すカタリーナは、きっと私を励ましてくれているのだろう。


『環菜も知ってると思うけど、チェコの公用語はチェコ語なの。だけど、英語も通じるところが多いから、英語が話せる環菜ならそんなに困らないと思うわ。でも何かあったら私に言ってね!』

『分かった、ありがとう!』

『さっそくだけど、ちょっと家の周りを案内しようか?それとも時差ボケもあるだろうし、ゆっくりする?』

『せっかくだから家の周りだけ教えてもらってから、部屋で休ませてもらおうかな』

『オッケー!じゃあ行くわよ!』

私たちは財布や携帯など最低限の荷物だけを持って外へ繰り出す。

3月下旬のプラハはまだまだ冷え込みが激しく、私は顔を隠すようにコートのフードを被った。



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