Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
その日の夜は、カタリーナとカタリーナの彼であるアンドレイとの食事会だった。
今日はカタリーナが家庭料理を振る舞いたいと意気込み、家のリビングでカタリーナのお手製料理に舌鼓を打っている。
『環菜はカタリーナから聞いていたとおり、とってもチャーミングで可愛い女性だね!』
アンドレイは外国人男性らしいリップサービスで私を褒めてくれる。
彼は私とカタリーナより10歳年上の大人の男性で、包容力を感じるおおらかな雰囲気のある人だった。
『2人の出会いはどこだったの?』
『チャリティーイベントで出会ったんだ。彼女は参加者で、僕はイベントを視察しててね』
カタリーナは、高級ホテルでマネージャーとして活躍しているのだが、休日には恵まれない子供を支援するようなチャリティー活動にも精を出しているそうだ。
『視察って?』
『アンドレイはね、プラハの若手議員なの!お父様も議員なのよ』
カタリーナによると彼は2世議員のようだった。
勝手な偏見ながら、議員なのに偉ぶった態度は全然なく、人の話に耳を傾ける姿勢がある。
きっと優秀な議員なのだろうと思った。
『カタリーナから環菜は仕事を辞めてプラハに来たって聞いたけど、前はどんな仕事をしてたの?』
そう、アンドレイから聞かれてギクリと身体が強張る。
『えっと、色々だけど、お芝居を少しかじったりしてたかなぁ』
私は嘘はつかないものの、曖昧に少しぼかして答えた。
職業を言っていないだけで事実だ。
『へぇそうなんだ。そうだ、実は環菜にお願いがあるんだった!』
突然何かを思い出したようにアンドレイが話を変え、私は少しホッとする。
アンドレイはカタリーナを見て頷き合うと、改めて私に視線を移す。
『実は今度、在チェコ日本大使館で桜を楽しむレセプションパーティーがあって招待されててね。パートナー同伴でなんだけど、あいにくその日はカタリーナが都合がつかないんだ。それで、ぜひ環菜に一緒に行ってもらえないかと思って。どうかな?』
『えっ!私が??』
『環菜なら日本語も英語も話せるし、カタリーナの友人だから僕も安心だし。日本のことで分からないことがあったら、ぜひ僕をフォローしてほしいな』
戸惑っていると、カタリーナも口を開く。
『お願い!環菜!アンドレイを助けてあげてくれない?』
お世話になっているカタリーナからのお願いならぜひ力になりたい。
ただ、場所が日本大使館ということは、きっと日本人も多くいるに違いない。
もし私のことを知ってる人がいたら‥‥と怖くなる気持ちもあった。
(でも、この地でやり直そうって決めたじゃない。それに今日会った現地在住の日本人も私のこと知らない感じだったし大丈夫かもしれない。何よりカタリーナの頼みなんだもの!)
苦渋の決断だったが、私は決意を滲ませながら、アンドレイに了承の返事を返した。
今日はカタリーナが家庭料理を振る舞いたいと意気込み、家のリビングでカタリーナのお手製料理に舌鼓を打っている。
『環菜はカタリーナから聞いていたとおり、とってもチャーミングで可愛い女性だね!』
アンドレイは外国人男性らしいリップサービスで私を褒めてくれる。
彼は私とカタリーナより10歳年上の大人の男性で、包容力を感じるおおらかな雰囲気のある人だった。
『2人の出会いはどこだったの?』
『チャリティーイベントで出会ったんだ。彼女は参加者で、僕はイベントを視察しててね』
カタリーナは、高級ホテルでマネージャーとして活躍しているのだが、休日には恵まれない子供を支援するようなチャリティー活動にも精を出しているそうだ。
『視察って?』
『アンドレイはね、プラハの若手議員なの!お父様も議員なのよ』
カタリーナによると彼は2世議員のようだった。
勝手な偏見ながら、議員なのに偉ぶった態度は全然なく、人の話に耳を傾ける姿勢がある。
きっと優秀な議員なのだろうと思った。
『カタリーナから環菜は仕事を辞めてプラハに来たって聞いたけど、前はどんな仕事をしてたの?』
そう、アンドレイから聞かれてギクリと身体が強張る。
『えっと、色々だけど、お芝居を少しかじったりしてたかなぁ』
私は嘘はつかないものの、曖昧に少しぼかして答えた。
職業を言っていないだけで事実だ。
『へぇそうなんだ。そうだ、実は環菜にお願いがあるんだった!』
突然何かを思い出したようにアンドレイが話を変え、私は少しホッとする。
アンドレイはカタリーナを見て頷き合うと、改めて私に視線を移す。
『実は今度、在チェコ日本大使館で桜を楽しむレセプションパーティーがあって招待されててね。パートナー同伴でなんだけど、あいにくその日はカタリーナが都合がつかないんだ。それで、ぜひ環菜に一緒に行ってもらえないかと思って。どうかな?』
『えっ!私が??』
『環菜なら日本語も英語も話せるし、カタリーナの友人だから僕も安心だし。日本のことで分からないことがあったら、ぜひ僕をフォローしてほしいな』
戸惑っていると、カタリーナも口を開く。
『お願い!環菜!アンドレイを助けてあげてくれない?』
お世話になっているカタリーナからのお願いならぜひ力になりたい。
ただ、場所が日本大使館ということは、きっと日本人も多くいるに違いない。
もし私のことを知ってる人がいたら‥‥と怖くなる気持ちもあった。
(でも、この地でやり直そうって決めたじゃない。それに今日会った現地在住の日本人も私のこと知らない感じだったし大丈夫かもしれない。何よりカタリーナの頼みなんだもの!)
苦渋の決断だったが、私は決意を滲ませながら、アンドレイに了承の返事を返した。