Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
4月上旬になり、桜が満開になる頃。
毎年恒例の桜を楽しむレセプションパーティーが日本大使館主催で開催された。
招いているのは、プラハの議員や現地企業の役員、日本人コミュニティの重鎮など有力者ばかりだ。
主催者として、大使と大使夫人は挨拶回りで大忙しだ。
僕も主催側として、ご年配の未亡人である日本商工会の元会長夫人をエスコートしながら、有力者と挨拶を交わして情報収集に勤しんでいた。
「あなたもそろそろちゃんとした恋人を作ったらどう?毎回私をパートナーとして利用しちゃって」
挨拶回りの合間に元会長夫人は呆れながら僕に話しかけてきた。
彼女にはいつもパーティーの時にパートナーを務めてもらっていて助かっている。
60歳を超えたご夫人なら、そういったパートナーと勘違いされることがないからだ。
もちろん日本人コミュニティに影響力のある有力者の1人でもあるので、丁重に扱いたい相手でもある。
彼女は僕のことを孫のように思ってくれているようで、たびたびお小言をいただく。
「定期的に彼女がいるらしいのは知ってるのよ。でも一度もこういう場でのパートナーを依頼してないじゃない?真剣な相手ではないってことでしょう?」
「僕の口からはなんとも言えませんね。毎回真剣ですよ」
はぐらかすようにニッコリ笑みを作りながらそう答えれば、彼女は嘆かわしそうな視線を向けるだけでそれ以上は追及してこなかった。
実際のところ、彼女が指摘したとおり、恋人が定期的にいるのは事実だ。
相手からアプローチされて、食事に行き、身体を重ねて、面倒なことを言い出しそうな相手でなければ、そのまま恋人として付き合う。
ただ、その相手が他の男の方へ行こうがなにをしようが大して気にならず、全くもって執着することがない。
「何を考えているのか分からない」「私のこと好きだと思えない」と泣かれると潮時だなとサッサと清算してしまう。
要は、恋人がいようといまいと、あまり僕の生活に関係ない感じなのだ。
女性の方から次から次へと近寄ってくるので、その相手をそれなりにしてるだけだった。
しかし今は、あの音大生が厄介だ。
あの子にはそもそも何の興味もなければ恋人関係にもなりたくもないし、正直言ってしばらく恋人はいらないかなという気分でもある。
(とはいえ、女性は今まで通り近寄ってくるだろうな。女避けとしてそばにいながら僕を好きになることのないような都合の良い相手がいないもんかな)
そんな都合の良い女性なんているはずないと、自分のバカな考えに自嘲気味に小さく笑ってしまった。
そんな時だった。
僕の目に飛び込んできたのは、この前カフェで助けたあの女性の姿だった。
毎年恒例の桜を楽しむレセプションパーティーが日本大使館主催で開催された。
招いているのは、プラハの議員や現地企業の役員、日本人コミュニティの重鎮など有力者ばかりだ。
主催者として、大使と大使夫人は挨拶回りで大忙しだ。
僕も主催側として、ご年配の未亡人である日本商工会の元会長夫人をエスコートしながら、有力者と挨拶を交わして情報収集に勤しんでいた。
「あなたもそろそろちゃんとした恋人を作ったらどう?毎回私をパートナーとして利用しちゃって」
挨拶回りの合間に元会長夫人は呆れながら僕に話しかけてきた。
彼女にはいつもパーティーの時にパートナーを務めてもらっていて助かっている。
60歳を超えたご夫人なら、そういったパートナーと勘違いされることがないからだ。
もちろん日本人コミュニティに影響力のある有力者の1人でもあるので、丁重に扱いたい相手でもある。
彼女は僕のことを孫のように思ってくれているようで、たびたびお小言をいただく。
「定期的に彼女がいるらしいのは知ってるのよ。でも一度もこういう場でのパートナーを依頼してないじゃない?真剣な相手ではないってことでしょう?」
「僕の口からはなんとも言えませんね。毎回真剣ですよ」
はぐらかすようにニッコリ笑みを作りながらそう答えれば、彼女は嘆かわしそうな視線を向けるだけでそれ以上は追及してこなかった。
実際のところ、彼女が指摘したとおり、恋人が定期的にいるのは事実だ。
相手からアプローチされて、食事に行き、身体を重ねて、面倒なことを言い出しそうな相手でなければ、そのまま恋人として付き合う。
ただ、その相手が他の男の方へ行こうがなにをしようが大して気にならず、全くもって執着することがない。
「何を考えているのか分からない」「私のこと好きだと思えない」と泣かれると潮時だなとサッサと清算してしまう。
要は、恋人がいようといまいと、あまり僕の生活に関係ない感じなのだ。
女性の方から次から次へと近寄ってくるので、その相手をそれなりにしてるだけだった。
しかし今は、あの音大生が厄介だ。
あの子にはそもそも何の興味もなければ恋人関係にもなりたくもないし、正直言ってしばらく恋人はいらないかなという気分でもある。
(とはいえ、女性は今まで通り近寄ってくるだろうな。女避けとしてそばにいながら僕を好きになることのないような都合の良い相手がいないもんかな)
そんな都合の良い女性なんているはずないと、自分のバカな考えに自嘲気味に小さく笑ってしまった。
そんな時だった。
僕の目に飛び込んできたのは、この前カフェで助けたあの女性の姿だった。