Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
「ちなみにプラハはもう色々見て回った?」
「実は全然まだなんだよね。前に住んでた家の近くを散策したくらいで」
「それなら午後はせっかくだしプラハ城とか、カレル橋とか、いわゆる観光名所を案内するよ」
「忙しいのにいいの?」
「もちろん」
ニコニコとした王子様スマイルを向けられて、もちろん善意で言ってくれているのは分かるが何か裏を感じてしまう。
私はこの際だからズバリ聞いてみる。
「あの、何か企んでる?他にも意図があったりする?」
私の質問は的を得ていたようで、桜庭さんは少し驚いた顔をすると、今度はニヤリと口角を上げた。
それは王子様スマイルなんかじゃなくて、どこか黒いものが見え隠れしている。
「すごいね、環菜は。まさか見抜かれるとは」
「だってそういう顔してたよ。やっぱり何か他に目的があるの?」
「そのとおり。散策しながら、婚約者の練習をしよう。外でそれらしく振る舞えるかの予行練習ね」
「‥‥本当にそれだけ?」
「それだけだよ」
なんとなく言葉に含みを感じたが、それ以上話すつもりはないらしい。
彼は口を閉ざしてニコニコと笑うだけだった。
コーヒーを飲み終わると、私たちは出掛ける準備をして外に出る。
まず最初に向かうのはカレル橋だ。
石畳みの道を歩き出すと、桜庭さんが私に手を差し出してきた。
エスコートかなと思って、軽く手を重ねると、そのまま指を絡めてギュッと握られ驚く。
これは完全にエスコートではなく、普通に手を繋いでいる状態だ。
しかも密着度の高い恋人繋ぎだ。
思わず勢いよく私より背の高い彼を見上げたが、彼はさも当然のように首を傾げて私を見下ろす。
「なに?」
「なにって、これ何ですか?エスコートかと思ったのに」
「婚約者なんだから手を繋ぐくらい当たり前なんじゃないかと思って。これも演技の一貫だよ」
「うっ‥‥」
そう言われてしまうと何も言えない。
仕事の時以外でこんなふうに男性と手を繋ぐのは久しぶりで妙にドキドキしてしまう。
(いやいや、これも仕事みたいなものだよ!これは演技!婚約者役を遂行しなきゃ!)
いつものように軽く目を瞑って役に集中する。
この役の子なら、ずっと憧れてた人と婚約者になってすごく嬉しくてもっとくっつきたいって思うはずだと思った私は、繋いだ手と反対側の手で彼の腕を引き寄せて、密着させるように身体を彼の方へ寄せた。
彼の身体にぴったりと密着し、温かな体温を服越しに感じる。
「‥‥徹底した演技だね」
「こっちの方がもっと婚約者っぽいでしょ?長年憧れてた人と結ばれたんだから嬉しいし」
桜庭さんは少し驚いたようだが、納得したのか、私たちはそのままくっつきながら街を歩いた。
「実は全然まだなんだよね。前に住んでた家の近くを散策したくらいで」
「それなら午後はせっかくだしプラハ城とか、カレル橋とか、いわゆる観光名所を案内するよ」
「忙しいのにいいの?」
「もちろん」
ニコニコとした王子様スマイルを向けられて、もちろん善意で言ってくれているのは分かるが何か裏を感じてしまう。
私はこの際だからズバリ聞いてみる。
「あの、何か企んでる?他にも意図があったりする?」
私の質問は的を得ていたようで、桜庭さんは少し驚いた顔をすると、今度はニヤリと口角を上げた。
それは王子様スマイルなんかじゃなくて、どこか黒いものが見え隠れしている。
「すごいね、環菜は。まさか見抜かれるとは」
「だってそういう顔してたよ。やっぱり何か他に目的があるの?」
「そのとおり。散策しながら、婚約者の練習をしよう。外でそれらしく振る舞えるかの予行練習ね」
「‥‥本当にそれだけ?」
「それだけだよ」
なんとなく言葉に含みを感じたが、それ以上話すつもりはないらしい。
彼は口を閉ざしてニコニコと笑うだけだった。
コーヒーを飲み終わると、私たちは出掛ける準備をして外に出る。
まず最初に向かうのはカレル橋だ。
石畳みの道を歩き出すと、桜庭さんが私に手を差し出してきた。
エスコートかなと思って、軽く手を重ねると、そのまま指を絡めてギュッと握られ驚く。
これは完全にエスコートではなく、普通に手を繋いでいる状態だ。
しかも密着度の高い恋人繋ぎだ。
思わず勢いよく私より背の高い彼を見上げたが、彼はさも当然のように首を傾げて私を見下ろす。
「なに?」
「なにって、これ何ですか?エスコートかと思ったのに」
「婚約者なんだから手を繋ぐくらい当たり前なんじゃないかと思って。これも演技の一貫だよ」
「うっ‥‥」
そう言われてしまうと何も言えない。
仕事の時以外でこんなふうに男性と手を繋ぐのは久しぶりで妙にドキドキしてしまう。
(いやいや、これも仕事みたいなものだよ!これは演技!婚約者役を遂行しなきゃ!)
いつものように軽く目を瞑って役に集中する。
この役の子なら、ずっと憧れてた人と婚約者になってすごく嬉しくてもっとくっつきたいって思うはずだと思った私は、繋いだ手と反対側の手で彼の腕を引き寄せて、密着させるように身体を彼の方へ寄せた。
彼の身体にぴったりと密着し、温かな体温を服越しに感じる。
「‥‥徹底した演技だね」
「こっちの方がもっと婚約者っぽいでしょ?長年憧れてた人と結ばれたんだから嬉しいし」
桜庭さんは少し驚いたようだが、納得したのか、私たちはそのままくっつきながら街を歩いた。