Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
カレル橋に向かって川沿いを歩くと、川向かいにプラハ城が見え、圧巻の景色だった。
赤い屋根の建物が並ぶ街並みも可愛くて、まさにおとぎの国だ。
「あれがカレル橋だよ」
桜庭さんが指差す方を見ると、立派な橋がプラハ城がある対岸に向かってかかっている。
「カレル橋はプラハ最古の橋で、ゴシック様式で造られた美しい橋だよ。ちなみにこの川はなんていうか知ってる?」
「川の名前は意識したことなかったかも」
「これはモルダウ川っていう川で、チェコではヴルタヴァ川っていうけどね。ほら、モルダウ川っていえば日本でも歌で有名でしょ。我が祖国っていう楽曲聞いたことない?」
そう言われて記憶を遡ると、小学生の時に合唱したような気がした。
「聞いたことあるかも!へぇ、あのモルダウ川なんだぁ。なんか感慨深い!」
「ここ、夜もきれいだよ。オレンジの光が点々と灯るから幻想的だし」
「素敵だね!」
現地在住の外交官らしく、桜庭さんはまるでガイドさんのように解説しながら案内してくれる。
ちょっとお得な気分だった。
カレル橋に着くと、やはり観光名所とあって人がすごく多い。
みんな思い思いにその美しさをカメラに収めようと写真撮影をしている。
桜庭さんに手を引かれ、私はカメラを避けるようにしながら歩いた。
橋の上も美しく、欄干には聖人の像が数多く設置されていた。
そのどれもが精巧な造りで思わず見入ってしまう。
その時、風がピューっと吹き抜け、髪がふわりと舞い上がった。
橋の上は風通しがよくて、まだ肌寒いこの季節、風が冷たく感じた。
「寒い?」
「うん、でも大丈夫。橋の上は風通しがいいから、しょうがないね」
桜庭さんに問われ、心配させないように微笑むと、彼は私の顔を覗き込む。
そして握った手と反対側の手をおもむろに持ち上げると、そっとそのまま私の頬に触れた。
いきなりのことで一瞬ビクッと身がすくむ。
「頬っぺたが赤いね。触っても冷たいし」
「ま、まぁそうだろうね。でも大丈夫だよ?」
ちょっと動揺しながらも、「私は婚約者」と心の中で唱えて平然を装う。
(なんていうか、桜庭さんは仕草と行動がいちいち唐突!それに女性慣れしたスマートさで来られるから、プライベートでこういうこと長らくなかった私の心臓に悪いんだけど‥‥!)
桜庭さんはニコッと笑うと、今度は繋いでいた手を自分のコートのポケットに入れ込んだ。
「手ぐらいしか温めてあげられないけど。どう?さっきよりマシ?」
「えっ、あ、うん!」
「そう、それなら良かった。橋の上は寒いし、早めに通り抜けてプラハ城に向かおうか」
「そ、そうだね!」
赤い屋根の建物が並ぶ街並みも可愛くて、まさにおとぎの国だ。
「あれがカレル橋だよ」
桜庭さんが指差す方を見ると、立派な橋がプラハ城がある対岸に向かってかかっている。
「カレル橋はプラハ最古の橋で、ゴシック様式で造られた美しい橋だよ。ちなみにこの川はなんていうか知ってる?」
「川の名前は意識したことなかったかも」
「これはモルダウ川っていう川で、チェコではヴルタヴァ川っていうけどね。ほら、モルダウ川っていえば日本でも歌で有名でしょ。我が祖国っていう楽曲聞いたことない?」
そう言われて記憶を遡ると、小学生の時に合唱したような気がした。
「聞いたことあるかも!へぇ、あのモルダウ川なんだぁ。なんか感慨深い!」
「ここ、夜もきれいだよ。オレンジの光が点々と灯るから幻想的だし」
「素敵だね!」
現地在住の外交官らしく、桜庭さんはまるでガイドさんのように解説しながら案内してくれる。
ちょっとお得な気分だった。
カレル橋に着くと、やはり観光名所とあって人がすごく多い。
みんな思い思いにその美しさをカメラに収めようと写真撮影をしている。
桜庭さんに手を引かれ、私はカメラを避けるようにしながら歩いた。
橋の上も美しく、欄干には聖人の像が数多く設置されていた。
そのどれもが精巧な造りで思わず見入ってしまう。
その時、風がピューっと吹き抜け、髪がふわりと舞い上がった。
橋の上は風通しがよくて、まだ肌寒いこの季節、風が冷たく感じた。
「寒い?」
「うん、でも大丈夫。橋の上は風通しがいいから、しょうがないね」
桜庭さんに問われ、心配させないように微笑むと、彼は私の顔を覗き込む。
そして握った手と反対側の手をおもむろに持ち上げると、そっとそのまま私の頬に触れた。
いきなりのことで一瞬ビクッと身がすくむ。
「頬っぺたが赤いね。触っても冷たいし」
「ま、まぁそうだろうね。でも大丈夫だよ?」
ちょっと動揺しながらも、「私は婚約者」と心の中で唱えて平然を装う。
(なんていうか、桜庭さんは仕草と行動がいちいち唐突!それに女性慣れしたスマートさで来られるから、プライベートでこういうこと長らくなかった私の心臓に悪いんだけど‥‥!)
桜庭さんはニコッと笑うと、今度は繋いでいた手を自分のコートのポケットに入れ込んだ。
「手ぐらいしか温めてあげられないけど。どう?さっきよりマシ?」
「えっ、あ、うん!」
「そう、それなら良かった。橋の上は寒いし、早めに通り抜けてプラハ城に向かおうか」
「そ、そうだね!」