Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
「好きにしてください。ただ僕が彼女を愛してる事実は変わりませんので。ではこれで失礼しますね」
あなたに振り向く可能性は1ミリもありませんよと言外に匂わせて言い放つと、僕は三上さんを振り返ることなくその場を去った。
それにしても、「愛してる」なんて言葉はフリとは言えど初めて口にした。
自分とは縁のない言葉だと思っていたのだが、まさか偽装するために言うことになるとは人生分からないものだ。
そんなことを思いながら、トラムに乗り込み、プライベート用の携帯電話を見ると1件メールが入っている。
相手は外務省の同期である新谷健志からだった。
新谷とは入省時期が同じで、年齢も同い年、何かと使える男で唯一親交のある同期だった。
今は日本の外務省にいるが、その前はアフリカのある国の在外公館に赴任していた。
新谷からメールなんて珍しいなと思い、読んでみると「仕事が終わったら電話しろ」とだけ書かれてあった。
腕時計で時間を確認すれば、今は18時半頃だ。
サマータイムで日本との時差は7時間だから、向こうは今深夜の1時半頃だろう。
(まぁ新谷ならまだ余裕で起きてる時間だろうな。トラムから降りたらかけてみるか)
そう思い、家の最寄りの停留所で降りると、そのまま無料通話アプリで電話をかけた。
最近はこういったアプリの普及で日本と連絡をとるのもずいぶん便利になったものだ。
「もしもし」
待ち構えていたかのように2コールくらいで電話が取られ、あまりの早さに少し驚く。
「新谷?メール見たけどどうしたの?」
「聞きたいことがあって。おい、お前に婚約者ができたって本当か!?」
どうやら婚約者情報が海を超えて日本まで渡っていたらしい。
まだ1日も経っていないのにすごいスピードで広がっているものだと感心する。
「もう聞いたの?早いね」
「ってことはマジってことか!そっちにいる渡瀬が俺に連絡してきたんだよ」
「ああ渡瀬から聞いたわけね」
どうやら渡瀬は目論見通り良いスピーカーぶりを発揮してくれているようだ。
あなたに振り向く可能性は1ミリもありませんよと言外に匂わせて言い放つと、僕は三上さんを振り返ることなくその場を去った。
それにしても、「愛してる」なんて言葉はフリとは言えど初めて口にした。
自分とは縁のない言葉だと思っていたのだが、まさか偽装するために言うことになるとは人生分からないものだ。
そんなことを思いながら、トラムに乗り込み、プライベート用の携帯電話を見ると1件メールが入っている。
相手は外務省の同期である新谷健志からだった。
新谷とは入省時期が同じで、年齢も同い年、何かと使える男で唯一親交のある同期だった。
今は日本の外務省にいるが、その前はアフリカのある国の在外公館に赴任していた。
新谷からメールなんて珍しいなと思い、読んでみると「仕事が終わったら電話しろ」とだけ書かれてあった。
腕時計で時間を確認すれば、今は18時半頃だ。
サマータイムで日本との時差は7時間だから、向こうは今深夜の1時半頃だろう。
(まぁ新谷ならまだ余裕で起きてる時間だろうな。トラムから降りたらかけてみるか)
そう思い、家の最寄りの停留所で降りると、そのまま無料通話アプリで電話をかけた。
最近はこういったアプリの普及で日本と連絡をとるのもずいぶん便利になったものだ。
「もしもし」
待ち構えていたかのように2コールくらいで電話が取られ、あまりの早さに少し驚く。
「新谷?メール見たけどどうしたの?」
「聞きたいことがあって。おい、お前に婚約者ができたって本当か!?」
どうやら婚約者情報が海を超えて日本まで渡っていたらしい。
まだ1日も経っていないのにすごいスピードで広がっているものだと感心する。
「もう聞いたの?早いね」
「ってことはマジってことか!そっちにいる渡瀬が俺に連絡してきたんだよ」
「ああ渡瀬から聞いたわけね」
どうやら渡瀬は目論見通り良いスピーカーぶりを発揮してくれているようだ。