Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
そういえばさっきから環菜はテレビばっかり見ているなと思い、僕もそちらに視線を移す。
環菜が見ていたのは、現地で放送されている日本のアニメだった。
もちろん音声はチェコ語だ。
「アニメが好きなの?」
「チェコ語を覚えるのにちょうど良いかなと思って。アニメだから言葉が簡単だし、馴染みのあるアニメだからチェコ語が分からなくてもなんとなく話が分かるしね!」
「あぁ、なるほどね」
よく見ると、たまにアニメのセリフを環菜もぶつぶつと口に出して真似をしていた。
英語をあれだけ話せるなら、そんなにチェコでも生活に困らないだろうにチェコ語を勉強していることにも驚いた。
現地に馴染もうと努力している姿勢には好感が持てる。
「智くんはどうやってチェコ語を覚えたの?」
「僕も現地のテレビ見たり、現地人と話したりして覚えたかな」
「そうなんだ。ちなみに何ヵ国語話せるの?」
「8ヵ国語」
「は、8ヵ国!?すごいっ!具体的には何語?」
「日本語、英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、ドイツ語、チェコ語の8ヵ国語。僕の専門がヨーロッパだから、その周辺の言語ばっかりだけどね。中国語もできたら便利なんだけど」
「充分すぎると思うよ!さすが外交官だね!」
キラキラと目を輝かせて、初めて見るような尊敬の眼差しを向けられ、悪い気はしない。
僕に興味を持ってくれたようにも感じて、不思議と嬉しい気持ちになった。
「ねぇ、なんで8ヵ国語も話せるの?」
「なに?環菜は僕に興味持った?」
「えっ?そんなつもりじゃ‥‥!ただ、婚約者のフリするうえで知っておいた方がいいのかなって!」
焦ったように取り繕う姿に笑ってしまう。
また思わず素が出てしまった。
「僕の父も外交官で、子供の頃から海外で暮らしてたんだ。父もヨーロッパ方面の赴任が多かったからね。それこそ必要だったから覚えただけだよ」
環菜が生活のために料理を覚える必要があったと言っていたが、まさに僕はそれが外国語だったのだ。
「そうなんだ。それだったら、子供の頃に日本に住んでたのはそんなに長くないんだよね?私と知り合ったのって奇跡的じゃない?あ、私っていうのは婚約者の設定上のね!」
確かに子供の頃に近くに住んでいたという設定だったから、そう言っているのだろう。
「でもそれ、そもそも架空の設定でしょ」
「そうなんだけど!ちょっとロマンチックかなって思ったの!」
架空の話なのに真剣に考えている環菜が面白くて、僕はまたしてもクスクスと笑ってしまった。
こんなふうに誰かと会話をしながら、裏の読み合いをせずに食事を楽しむのは久しぶりだった。
思いの外、リラックスした時間を過ごした自分にあとになって驚いたけどーー。
環菜が見ていたのは、現地で放送されている日本のアニメだった。
もちろん音声はチェコ語だ。
「アニメが好きなの?」
「チェコ語を覚えるのにちょうど良いかなと思って。アニメだから言葉が簡単だし、馴染みのあるアニメだからチェコ語が分からなくてもなんとなく話が分かるしね!」
「あぁ、なるほどね」
よく見ると、たまにアニメのセリフを環菜もぶつぶつと口に出して真似をしていた。
英語をあれだけ話せるなら、そんなにチェコでも生活に困らないだろうにチェコ語を勉強していることにも驚いた。
現地に馴染もうと努力している姿勢には好感が持てる。
「智くんはどうやってチェコ語を覚えたの?」
「僕も現地のテレビ見たり、現地人と話したりして覚えたかな」
「そうなんだ。ちなみに何ヵ国語話せるの?」
「8ヵ国語」
「は、8ヵ国!?すごいっ!具体的には何語?」
「日本語、英語、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、ドイツ語、チェコ語の8ヵ国語。僕の専門がヨーロッパだから、その周辺の言語ばっかりだけどね。中国語もできたら便利なんだけど」
「充分すぎると思うよ!さすが外交官だね!」
キラキラと目を輝かせて、初めて見るような尊敬の眼差しを向けられ、悪い気はしない。
僕に興味を持ってくれたようにも感じて、不思議と嬉しい気持ちになった。
「ねぇ、なんで8ヵ国語も話せるの?」
「なに?環菜は僕に興味持った?」
「えっ?そんなつもりじゃ‥‥!ただ、婚約者のフリするうえで知っておいた方がいいのかなって!」
焦ったように取り繕う姿に笑ってしまう。
また思わず素が出てしまった。
「僕の父も外交官で、子供の頃から海外で暮らしてたんだ。父もヨーロッパ方面の赴任が多かったからね。それこそ必要だったから覚えただけだよ」
環菜が生活のために料理を覚える必要があったと言っていたが、まさに僕はそれが外国語だったのだ。
「そうなんだ。それだったら、子供の頃に日本に住んでたのはそんなに長くないんだよね?私と知り合ったのって奇跡的じゃない?あ、私っていうのは婚約者の設定上のね!」
確かに子供の頃に近くに住んでいたという設定だったから、そう言っているのだろう。
「でもそれ、そもそも架空の設定でしょ」
「そうなんだけど!ちょっとロマンチックかなって思ったの!」
架空の話なのに真剣に考えている環菜が面白くて、僕はまたしてもクスクスと笑ってしまった。
こんなふうに誰かと会話をしながら、裏の読み合いをせずに食事を楽しむのは久しぶりだった。
思いの外、リラックスした時間を過ごした自分にあとになって驚いたけどーー。