Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜

#11. レセプションパーティー

いよいよ婚約者役として本番の機会がやってきた。

今日は例のレセプションパーティーの日だ。

私は朝からパーティーに向けてドレスアップするべく、ドレスに身を包み、自分でヘアメイクをしていた。

今日のドレスは智くんが用意しておいてくれた、身体のラインがきれいに出る大人っぽい黒のタイトドレスだ。

髪は、ガーデンパーティーらしいので、風でぐちゃぐちゃにならないように、編み込みのポニーテールにした。

メイクはドレスに合わせて、大人っぽい感じにしておく。

全体的にシックな感じなので、キラキラと光って揺れるピアスとパールのネックレスで少し華やかさをプラスした。

こんな感じかなと鏡を見ていると、ちょうどコンコンとドアがノックされる。

「環菜、準備はどう?そろそろ出れる?」

「うん、ちょうど今できたからすぐ行くね!リビングで待ってて」

「分かった」

小さめのクラッチバックに必要な身の回り品を入れ手に持つと、私は部屋を出てリビングに向かった。

リビングでは普段の仕事の時よりフォーマルな格好の智くんが待っていた。

(うわぁ、さすがに似合うな。モデルみたいなんだけど‥‥!)

ダークネイビーの三揃いスーツに、ポケットチーフやネクタイピン、カフスボタンで華やかを添えているのがオシャレで、なんとも洗練された姿だ。

思わず目を奪われていると、彼が手を差し出してエスコートしてくれる。

「今日の環菜はいつもより大人っぽい感じだね。似合ってるよ」

「ありがとう」

「じゃあ行こうか」

「うん。いよいよ本番だね!」

気合を入れる私に、智くんは機嫌良さそうに笑うと、励ますように言う。

「いつも通りしていれば大丈夫だよ。事前リハーサルも入念にしたしね」

その言葉にあの日のことが脳裏に浮かび、カッと身体が熱くなった。

(いけない、いけない!今日は本番なんだから動揺してる場合じゃない!これまで培ってきた女優としての演技力の見せ場なんだから!)

再び自分に喝を入れ、智くんに続いて私はタクシーに乗り込んだ。
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