Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
「そう言うんだったら、じゃあ私はどう改善すればいいの?全く男性と口を聞かないわけにはいかないよね」

不満げに言い募る環菜に、僕はある提案をする。

「そうだなぁ。確かにそれは無理だろうから、環菜は僕のものだっていう印をつけとこうか」

「印?」

首を傾げる環菜を自分の方へ呼び寄せると、演技の改善事項だと思ったのか、彼女は素直に近寄ってきた。

「じゃあまず僕の隣に座って、こっち向いて?」

「うん」

向かい合わせになったところで、環菜の肩を掴み自分の方へ引き寄せた。

「えっ‥‥!」

動揺する環菜を無視し、そのまま彼女の首元に唇を寄せる。

環菜の陶器のように白いふっくらした肌に吸い付いて、そこに赤い花を咲かせた。

環菜の肌に自分がつけた印があるのは実に気分が良かった。

「ちょ、ちょっと!何するの!チクッとしたんだけど!」

「僕のものっていう印をつけたんだよ」

そう言うと環菜は目を潤ませて真っ赤になっている。

パーティーでのあの堂々とした振る舞いからは信じられない照れようだ。

「今度からパーティーに出席する時は、行く前につけてあげるよ」

「じょ、冗談だよね?こんな目立つところに付けられたら恥ずかしい‥‥」

「見えないところに付けて欲しいってこと?」

今度は鎖骨の下あたりに唇を寄せようとしたところ、さすがに次の行動に気付いたのか、顔を掴まれて静止させられた。

「そういう意味じゃないから‥‥!だからストップ!」

「そう、残念。じゃあ首筋に毎回印を付けさせてね」

「ダメに決まってるでしょ‥‥!そんなの恥ずかしくて婚約者役を演じるどころじゃなくなっちゃう。全然改善にならないよ」

「そうかな。じゃあどうしようか」

考える素振りを見せると、環菜は掴んでいた僕の顔から手を離した。

首筋の印を気にしているようで、しきりに手で触っている様子が可愛いかった。

そんな姿を目に留めながら、僕は次なる提案をする。

「それじゃあ、これはどう?」

そう言うと、そのままソファーの上に環菜を押し倒し、両手首を押さえた。
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