Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
『それじゃあ、まずは名前を教えてくれるかしら』

『秋月環菜です』

『環菜はアジア人のように見えるけど、どこの国から来ているの?』

『日本です。プラハに来て2ヶ月くらいです』

『英語が堪能みたいだけど、チェコ語はどう?』

『まだまだですが、簡単な会話ならできます』

そこで私はチェコ語に切り替えて、マネージャーと少し話す。

とはいえ、まだ簡単な会話くらいしかできないので、このまま面接をチェコ語で続けるのは厳しくて途中で英語に戻した。

『うん、それだけできれば十分ね!』

『良かったです』

『あとはビザの問題なんだけど、就労が可能なビザは持ってるの?』

『はい。ワーキングホリデービザなので来年の3月末までは就労可能です』

念のために、鞄からパスポートを取り出して、ビザのページを見せた。

ワーキングホリデービザとは、18歳から30歳(国によっては25歳)までの若者を対象としたもので、1年間は観光、就学、就労ができる特別なビザなのだ。

私は1月にプラハ行きを決めると、急いで手続きを済ませてビザを得てからこちらに渡航したのだ。

『確かに就労可能なビザね。ちなみに、日本でカフェで働いた経験はある?』

『6〜7年前になりますけど、日本とカナダで働いたことがあります』

日本では大学生の頃にチェーン系のカフェで、カナダでは地元の個人経営カフェでアルバイトをした経験があった。

どうやら経験があったことが大きかったらしく、マネージャーは大きく笑顔で頷くと、私に手を差し出してきた。

『あなたならぜひうちで働いて欲しいわ。よろしくね』

『ありがとうございます!』

私たちは握手を交わすと、具体的に勤務条件について話をする。

結果、まずは週3〜4日くらいの頻度で6時間くらい働くことになった。

その後は様子を見てシフトを増やしても良いとのことだ。

6月に入ったプラハはこれから夏を迎えると観光のハイシーズンで忙しくなるらしい。

それに備えての募集だったようでさっそく来週からシフトに入って欲しいと言われ、私は快諾する。

新しい挑戦でプラハでの私の世界がさらに広がりそうな予感がしてワクワクした。
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