Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
『やぁ!君はノヴァコバ議員宅のレセプションパーティーで会った子じゃない?』
飲み物をお渡しするカウンターでコーヒーを差し出すと、お客さんからそう声をかけられて驚いた。
そう言われて相手をよく見ると、私に演技経験があると見抜いたあの時の男性だったのだ。
『あぁ、あの時の!お久しぶりです』
『また会えるといいねと言ってたけど、本当に会えたね。ここで働いてるの?』
『そうです。1ヶ月くらい前から働かせてもらってます』
『あの時は名前を聞きそびれたから、失礼じゃなければ名前を聞いてもいいかな?僕はジェームズだ』
『環菜です』
手を差し出されたので、挨拶をしながら握手をする。
パーティーの場でなくても、仕立ての良い服を着ていて洗練された雰囲気のあるおじさまだった。
『ジェームズさんは、アメリカの方ですか?』
『よく分かったね。そうだよ。今はプラハに期間限定で住んでいるんだ』
『アクセントが米国英語だったのでそうかなと思って。もしお近くにお住まいでしたら、ぜひまたいらしてください。ここのクロワッサンは絶品ですから!』
『それは楽しみだな』
ジェームズさんは楽しげに笑うとコーヒーを受け取り席の方へ向かった。
それからというものの、ジェームズさんは本当によく来てくれるようになり、カフェの常連さんとなった。
来てくれるたびに、忙しくなければ言葉を交わす。
ジェームズさんは映画やドラマ、舞台に詳しいようで、その分野の最近のトレンドを教えてくれる。
離れたとはいえ、好きで興味がある分野だから聞いていてとても楽しいし、勉強にもなる。
他のスタッフには「環菜目当てで通ってるんじゃないの?」と言われるが、彼が恋愛的な意味で私に興味があるとはどうしても思えなかった。
なぜなら、元女優ということを周囲の人には隠しているので人には話せないが、ジェームズさんが私に聞いてくるのは「過去にどういう役を演じたことがあるか」とか、「どういう役を演じてみたいか」、「どの女優の演技が好きか」といったことばかりなのだ。
どういう意図の質問かは分からないが、たぶん演技好き仲間だと認識されたのではないかと思っている。
それに本能的に彼は悪い人ではないと感じていた。
飲み物をお渡しするカウンターでコーヒーを差し出すと、お客さんからそう声をかけられて驚いた。
そう言われて相手をよく見ると、私に演技経験があると見抜いたあの時の男性だったのだ。
『あぁ、あの時の!お久しぶりです』
『また会えるといいねと言ってたけど、本当に会えたね。ここで働いてるの?』
『そうです。1ヶ月くらい前から働かせてもらってます』
『あの時は名前を聞きそびれたから、失礼じゃなければ名前を聞いてもいいかな?僕はジェームズだ』
『環菜です』
手を差し出されたので、挨拶をしながら握手をする。
パーティーの場でなくても、仕立ての良い服を着ていて洗練された雰囲気のあるおじさまだった。
『ジェームズさんは、アメリカの方ですか?』
『よく分かったね。そうだよ。今はプラハに期間限定で住んでいるんだ』
『アクセントが米国英語だったのでそうかなと思って。もしお近くにお住まいでしたら、ぜひまたいらしてください。ここのクロワッサンは絶品ですから!』
『それは楽しみだな』
ジェームズさんは楽しげに笑うとコーヒーを受け取り席の方へ向かった。
それからというものの、ジェームズさんは本当によく来てくれるようになり、カフェの常連さんとなった。
来てくれるたびに、忙しくなければ言葉を交わす。
ジェームズさんは映画やドラマ、舞台に詳しいようで、その分野の最近のトレンドを教えてくれる。
離れたとはいえ、好きで興味がある分野だから聞いていてとても楽しいし、勉強にもなる。
他のスタッフには「環菜目当てで通ってるんじゃないの?」と言われるが、彼が恋愛的な意味で私に興味があるとはどうしても思えなかった。
なぜなら、元女優ということを周囲の人には隠しているので人には話せないが、ジェームズさんが私に聞いてくるのは「過去にどういう役を演じたことがあるか」とか、「どういう役を演じてみたいか」、「どの女優の演技が好きか」といったことばかりなのだ。
どういう意図の質問かは分からないが、たぶん演技好き仲間だと認識されたのではないかと思っている。
それに本能的に彼は悪い人ではないと感じていた。