Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
#2. スキャンダル
ブーブーブーブー
その日は早朝から携帯電話が鳴り響き、そのバイブ音で私は目を覚ました。
今日の仕事は昼からだから、こんな早朝に誰かから連絡が入るのは珍しい。
しかも私が電話に出ないと催促するかのように、何度も何度も何度もかかってきている。
これは異常事態に違いないと感じ、緊張が走った。
まだ外は薄暗く、私はベッドサイドテーブルの電気を点けると、やや強張った声で電話に出た。
「‥‥もしもし?」
「亜希!やっと出た!」
電話口からは皆川さんの切羽詰まった声が響く。
皆川さんがこんな焦っているのは非常に珍しく、それだけで緊急事態なのが分かった。
「どうしたんですか‥‥?」
「どうしたかじゃないよ!週刊誌の文秋に亜希のスキャンダルが今日載る。なんとか手を回そうとしたけど、もう止められない。たぶんあと1時間もすれば、ネットにも上がり出す」
「文秋?スキャンダル?」
何のことかサッパリ分からず、勢いよく話す皆川さんに私はついていけない。
その私の反応に気づき、皆川さんは訝し気だ。
「そうだよ。なんで僕に言ってくれなかった?知ってたらもっと手を打てたかもしれないのに」
「あの、ごめんなさい。話が見えない。スキャンダルって何のこと?」
「心当たりないの?これ、写真は僕から見ても明らかに亜希だよ。今から原稿のデータを携帯に送るから見て」
すぐに原稿が添付されてメールが届く。
私は電話をスピーカーフォンにして、皆川さんとの通話を維持しながら、原稿を確認する。
見た瞬間、驚きすぎて表情がすべて抜け落ちた。
スマホを持つ手が小刻みに震え始める。
「な、なにこれ‥‥」
そこには、【人気急上昇中の清純派女優の裏の顔。夜はイケメン持ち帰りでハッスル】というセンセーショナルな見出しと、ホテルのベッドの中で男性に腕枕をされて眠っている女性の写真が掲載されていた。
シーツで身体を隠しているが、男女ともに上半身は裸で事後である雰囲気が伝わってくる。
そしてその女性は私から見ても私だったのだ。
だけど全く心当たりがないのだ。
男性にはモザイクが入っているが、入っていなかったとしても、こんな人は知らない。
「彼氏がいるなら報告してって何度も言ったのに。これが世に出たら亜希はもう終わりだ‥‥」
「皆川さん、私こんなの知らない‥‥!本当に心当たりがない!」
「‥‥でもこれはどう見ても亜希だよね?」
「それはそうだけど。でも本当に分からない!」
わけがわからなすぎて混乱し、私はただただ「分からない、知らない」という言葉を繰り返した。
心臓がバクバクして動悸が止まらない。
「とりあえずこれから社長と一緒に亜希の家に行くから話を聞かせて。あと今日の予定は全部キャンセルね」
「‥‥分かった」
「40分以内には着くからね」
そう言って皆川さんは素早く電話を切った。
私は半ば呆然としてしまい、動くことすらできなかった。
その日は早朝から携帯電話が鳴り響き、そのバイブ音で私は目を覚ました。
今日の仕事は昼からだから、こんな早朝に誰かから連絡が入るのは珍しい。
しかも私が電話に出ないと催促するかのように、何度も何度も何度もかかってきている。
これは異常事態に違いないと感じ、緊張が走った。
まだ外は薄暗く、私はベッドサイドテーブルの電気を点けると、やや強張った声で電話に出た。
「‥‥もしもし?」
「亜希!やっと出た!」
電話口からは皆川さんの切羽詰まった声が響く。
皆川さんがこんな焦っているのは非常に珍しく、それだけで緊急事態なのが分かった。
「どうしたんですか‥‥?」
「どうしたかじゃないよ!週刊誌の文秋に亜希のスキャンダルが今日載る。なんとか手を回そうとしたけど、もう止められない。たぶんあと1時間もすれば、ネットにも上がり出す」
「文秋?スキャンダル?」
何のことかサッパリ分からず、勢いよく話す皆川さんに私はついていけない。
その私の反応に気づき、皆川さんは訝し気だ。
「そうだよ。なんで僕に言ってくれなかった?知ってたらもっと手を打てたかもしれないのに」
「あの、ごめんなさい。話が見えない。スキャンダルって何のこと?」
「心当たりないの?これ、写真は僕から見ても明らかに亜希だよ。今から原稿のデータを携帯に送るから見て」
すぐに原稿が添付されてメールが届く。
私は電話をスピーカーフォンにして、皆川さんとの通話を維持しながら、原稿を確認する。
見た瞬間、驚きすぎて表情がすべて抜け落ちた。
スマホを持つ手が小刻みに震え始める。
「な、なにこれ‥‥」
そこには、【人気急上昇中の清純派女優の裏の顔。夜はイケメン持ち帰りでハッスル】というセンセーショナルな見出しと、ホテルのベッドの中で男性に腕枕をされて眠っている女性の写真が掲載されていた。
シーツで身体を隠しているが、男女ともに上半身は裸で事後である雰囲気が伝わってくる。
そしてその女性は私から見ても私だったのだ。
だけど全く心当たりがないのだ。
男性にはモザイクが入っているが、入っていなかったとしても、こんな人は知らない。
「彼氏がいるなら報告してって何度も言ったのに。これが世に出たら亜希はもう終わりだ‥‥」
「皆川さん、私こんなの知らない‥‥!本当に心当たりがない!」
「‥‥でもこれはどう見ても亜希だよね?」
「それはそうだけど。でも本当に分からない!」
わけがわからなすぎて混乱し、私はただただ「分からない、知らない」という言葉を繰り返した。
心臓がバクバクして動悸が止まらない。
「とりあえずこれから社長と一緒に亜希の家に行くから話を聞かせて。あと今日の予定は全部キャンセルね」
「‥‥分かった」
「40分以内には着くからね」
そう言って皆川さんは素早く電話を切った。
私は半ば呆然としてしまい、動くことすらできなかった。