Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
#14. フラッシュバック
8月に入ると、さらに観光客が増えてお店は忙しくなってきた。
街を歩いていても、人が多いのを感じ、春先とは違う雰囲気がある。
そして同時に気付いたのは、日本人観光客も増えているということだ。
今まではヨーロッパ圏内の観光客が多かったのだが、日本の大学生が夏休みに入り、さらにはお盆休みの時期でもあるので、街中で観光客っぽい日本人をよく見かけるようになったのだ。
日本人が増えればその分日本人関係のトラブルも発生するようで、智くんも最近は忙しそうだった。
私は、神奈月亜希の印象とは違うメイクに意識的に変えて、念のため日本人を見かけるたびに、顔を見られないように俯いて避けるようにしていた。
あのスキャンダルからはもう8ヶ月くらい経っている。
人の記憶からは消えているのではと期待していた。
だけど、そんな私の考えは甘かったのだーー。
ある日、いつも通りカフェで働いていると、女子大生っぽい日本人の2人組が来店した。
彼女たちは、飲み物とクロワッサンを注文すると席でガイドブックを見ながらキャッキャとはしゃいで楽しそうに話している。
そのうちの1人がふと顔を上げて店内を見渡している時に、偶然少し目が合った。
すると彼女は、もう1人の友人の袖をひき、なにやらコソコソと話している。
「ねぇ、あれって女優の神奈月亜希じゃない?めっちゃ似てない?」
「確かに似てる!神奈月亜希って清純派気取ってたくせに超ビッチだった女優だよね」
「そうそう!芸能界引退したんだっけ?」
「知らないけど、あのスキャンダルのあと消えたもんね。もしかして海外逃亡!?」
「ありえる〜!それで海外でも男漁りしてるんじゃない?」
「あはは!日本じゃ飽き足らずに海外のイケメンも食いに来たってやつ?てかこれって特ダネじゃない?文秋に持ってったら情報売れるかな?」
「でも本人か分からないし無理でしょ。とりあえず私ツイートしちゃおっと!プラハで発見、神奈月亜希、男漁り中っと」
ヒソヒソと交わされるそんな悪意のこもった会話が漏れ聞こえてきて、私は恐怖で身体が震え始めるのを感じた。
(怖い‥‥!とりあえずこの場から逃げたい‥‥!!)
そう思うも、硬直してしまった身体が言うことを聞かず、まるで銅像のように立ち尽くしてしまう。
顔面蒼白になっていたのか、マネージャーが私の顔色に気付き、「具合が悪そうだからバックヤードでちょっと休んでなさい」と言ってくれた。
その声でようやく我に戻り、震える身体を必死に抑えながら、とりあえずバックヤードへ引っ込んだ。
街を歩いていても、人が多いのを感じ、春先とは違う雰囲気がある。
そして同時に気付いたのは、日本人観光客も増えているということだ。
今まではヨーロッパ圏内の観光客が多かったのだが、日本の大学生が夏休みに入り、さらにはお盆休みの時期でもあるので、街中で観光客っぽい日本人をよく見かけるようになったのだ。
日本人が増えればその分日本人関係のトラブルも発生するようで、智くんも最近は忙しそうだった。
私は、神奈月亜希の印象とは違うメイクに意識的に変えて、念のため日本人を見かけるたびに、顔を見られないように俯いて避けるようにしていた。
あのスキャンダルからはもう8ヶ月くらい経っている。
人の記憶からは消えているのではと期待していた。
だけど、そんな私の考えは甘かったのだーー。
ある日、いつも通りカフェで働いていると、女子大生っぽい日本人の2人組が来店した。
彼女たちは、飲み物とクロワッサンを注文すると席でガイドブックを見ながらキャッキャとはしゃいで楽しそうに話している。
そのうちの1人がふと顔を上げて店内を見渡している時に、偶然少し目が合った。
すると彼女は、もう1人の友人の袖をひき、なにやらコソコソと話している。
「ねぇ、あれって女優の神奈月亜希じゃない?めっちゃ似てない?」
「確かに似てる!神奈月亜希って清純派気取ってたくせに超ビッチだった女優だよね」
「そうそう!芸能界引退したんだっけ?」
「知らないけど、あのスキャンダルのあと消えたもんね。もしかして海外逃亡!?」
「ありえる〜!それで海外でも男漁りしてるんじゃない?」
「あはは!日本じゃ飽き足らずに海外のイケメンも食いに来たってやつ?てかこれって特ダネじゃない?文秋に持ってったら情報売れるかな?」
「でも本人か分からないし無理でしょ。とりあえず私ツイートしちゃおっと!プラハで発見、神奈月亜希、男漁り中っと」
ヒソヒソと交わされるそんな悪意のこもった会話が漏れ聞こえてきて、私は恐怖で身体が震え始めるのを感じた。
(怖い‥‥!とりあえずこの場から逃げたい‥‥!!)
そう思うも、硬直してしまった身体が言うことを聞かず、まるで銅像のように立ち尽くしてしまう。
顔面蒼白になっていたのか、マネージャーが私の顔色に気付き、「具合が悪そうだからバックヤードでちょっと休んでなさい」と言ってくれた。
その声でようやく我に戻り、震える身体を必死に抑えながら、とりあえずバックヤードへ引っ込んだ。