Actress〜偽りから始まるプラハの恋〜
僕がそんなふうに秘密裏に情報収集をしている最中、さらに環菜は謎な行動に出る。

「桜庭さん、お疲れ様です。さっきあのカフェ行ってきましたけど、とりあえず三上さんは見かけなかったです。環菜さんも不審な人はいないって言ってましたよ」

「それなら良かった。渡瀬、気にかけてくれてありがとう」

渡瀬にも協力を持ちかけて以降、彼はなにかと気にかけてくれていて助かっている。

この前は大使館を出たあたりで三上さんを見かけたらしく、僕と遭遇する前に追い返してくれていた。

「そういえば環菜さんって眼鏡姿も可愛いですね!初めて見ましたけど似合ってましたよ!」

「‥‥眼鏡?」

何の話かよく分からず、首を傾げる。

渡瀬はそんな僕の様子には気付かなかったようでさらに言葉を続ける。

「桜庭さんとラブラブですねって言うと顔を赤くして照れてるし、そんな姿も眼福でした。家に帰るとあんな子がいるなんて、桜庭さんが羨ましすぎます!」

どうやらカフェで働く環菜が眼鏡をかけていたようだ。

(眼鏡なんて家でしてるの見たことないけど。なんでカフェで?目が悪いわけでもないようだけどな)

違和感しかない行動である。

タイミング的にもあの情緒不安定になった日の直後だから、なんとなくそれと関連があるのではと勘繰ってしまう。

「あぁ!話戻りますけど、三上さんと言えば、カフェでは見かけなかったんですけど、街ですれ違ったんですよ。そしたらニタニタ笑った怪しいアジア人の男と一緒で。なんか悪巧みしてそうな雰囲気だったんですよね」

渡瀬のこういう直感は馬鹿にできない。

特に悪巧みに関することには野生の勘が当たりやすいのだ。

「それ気になる情報だね。三上さんの父親が重役を務める会社は確か中国とパイプが強いから、もしそのアジア人の男が中国人なら、その男にとってメリットとなることを提示できるだろうし」

「なるほど!」

「ちょっと気になるから、そういうことを探るのが上手い知り合いに声かけてみるよ。情報提供ありがとう」

礼を述べ、僕はさっそく探偵業のようなことをしている知り合いに連絡をとった。

三上さんを尾行して探って欲しいこと、なにか企みが露見すれば証拠を掴んでおいて欲しいことを告げる。

知り合いは承諾すると、すぐに行動に移ってくれるようだった。

< 92 / 169 >

この作品をシェア

pagetop