王子様とお姫様の甘い日常
安堂(あんどう)さーん」

俺がその声に美弥を振り返れば、美弥はノートを膝に乗せ、真剣な表情で新しいシステムキッチンの企画書の下書きをしている。

「安堂さん、いらっしゃいませんか?」

俺は再度聞こえてきた看護師の声に、美弥(みや)の頭をコツンと突いた。

「え?どしたの(はやて)

俺が軽く手を挙げると看護師が頷くのが見える。

「安堂美弥」

「へ?」

美弥が案の定、驚いた顔をしてから頬を染め慌てて立ち上がった。

「えと颯、何回呼ばれてた?」

「2回も呼ばれてた、いい加減慣れろよ」

「だって……」

「ほら、俺らの大事な双子たち診てもらってきて」

「あ、うん。いってくる」

美弥がお腹に手を当てながら診察室に入るのを眺めながら俺はふっと笑った。

(安堂美弥か……)
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