王子様とお姫様の甘い日常
俺は、美弥が入っていった診察室がまだ閉まったままなのを確認すると、辞典を開き、今度は男の子の名前候補を探していく。


(……優生(ゆうせい)優希(ゆうき)優翔(ゆうと)……)

「うーん、なんか俺みたいに、とんがってる印象じゃなくて、優しいまろやかな奴に育ってほしいんだよなー、強引で独占欲強めの奴より、優しい男がモテる時代だからな……」

俺が顎に手を当てて首を捻ったとき、頭上から声が聞こえた。

颯斗(はやと)

「は?」

俺が視線を上げれば美弥がエコー写真片手に、にこりと微笑んだ。

「おい、いつのまにか診察室から出てきたんだよ」

「ついさっきだよ、颯、夢中で辞典みてて全然気づかないんだもん」

俺は双子達が、前回よりも大きくなってることを確認してから指でそっとなぞった。

「あっそ。で?さっきの颯斗って誰だよ?まさか俺の名前、間違えたとかじゃねぇよな?」

美弥がすぐにクスクス笑う。

「間違えるわけないでしょ。あのね、双子の男の子の名前、颯斗にしたいの」 

「颯斗?俺と被ってんだろ」

「うん。颯みたいに優しくて、夜空に輝く北斗七星の灯りみたいに、どんなときでもまわりを明るく照らして頼りになる男の子になりますようにって」

俺は思わず顔の半分を掌で覆った。
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