王子様とお姫様の甘い日常
「颯、顔真っ赤だよ」

「うるせーな、会計済ませてかえんぞ」

俺は嬉しさと恥ずかしさで、そっぽを向きながら美弥の掌を握りしめた。


俺は会計を済ませると美弥を連れて、レディースクリニックのエントランスを潜り抜ける。


その時だった。


──「え?嘘でしょ!」


俺が聞き覚えのある、その声に視線を向けるのと、美弥が目をまん丸にするのがほとんど同時だった。


──「だから、なんでここにいるのよっ」

──「なんでって、心配だから、僕わざわざ午後休とったんだけど?」

見れば男女のカップルが、病院の駐車場で押し問答している。

(おいおい。何であいつらが)

俺がめんどくさげに首に手を置くと、美弥が俺を見上げた。

「ね、颯。もしかして……」

美弥が自身のお腹をそっと撫でながら、首を傾げた。

「え?どうかした?」

「だって……二人がいるのって……その……ここレディースクリニックだから」

「あっ!マ……ジで?そういうこと?……美弥いくぞ」

「ちょっと颯……っ」

俺は颯爽と美弥の手を引いた。
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