青天、哉。
「泊めてください」
「お断りします」
「どうして?」
「どうして、だろうな。自分で考えろ。子供じゃないんだ」
「あなたは私のことを子供だって言ったじゃない。たしかにあなたの言うとおりだと思う。あなたに比べると、私には何の知識もないし、経験も少ない」
「未熟を自覚している奴は、もう立派な大人だ。高野悦子もそう言ってる」
「どうしてもダメ?」
「どうしても、ダメだ」
「じゃあ、わかった」
と私は傍に脱ぎ捨てられていた頼人の、スウェットの紐を抜いて、部屋の真ん中に伸ばして置いた。
「何のつもりだ?」
「何のつもり、でしょうね。自分で考えて。子供じゃあるまいし」
「そういう意味で聞いているんじゃない。何のつもりでこんな考えに至ったんだってことだ」
「家賃は払うわよ。半分ね。その代わりにこの紐から半分を私に貸してほしいの。それだけ。もし断るなら……」
「断るなら?」
「今すぐにでも叫んで、あなたに襲われたって騒ぐから」