青天、哉。
アゲハはよく、頼人のアパートにやってきた。
そして、私のためにお菓子やジュースを買ってきたり、「着なくなったから」と言って、服をくれたりした。
最初のうちは、素直になれず、そっけない態度をとっていた私だけど、だんだんそうすることが惨めで、自分がとっても小さい人間に思えた。
それからは、心を開くように努力して、アゲハと二人っきりで竹下通りを歩けるようになった頃、アゲハが私に告白をしてくれた。
「このアゲハ蝶はね、ある映画に出てくるのを真似したんだ」
「ある映画って?」
「うーん、ライトと出会うきっかけになった映画、かな。それ以上は言えないや」
「どうして?」
「どうして、か。そうだなー、それが唯一の絆みたいなもんだからかな。二人っきりの秘事って、多分そういうもんなんだと思うの」
「なんかライトもアゲハも時々、難しいこと言うね」
「それは私たちが年上だからかな。伊達にホリーちゃんより何年も多くご飯食べてないし。でも、ホリーちゃんなら、私たちよりもずっと早く、そういうことに気づけるようになると思う。ホリーちゃん、しっかりしてるから」
思えば、私を初めて一人前のように認めてくれたのは、アゲハだったと思う。