青天、哉。




頼人の家に上がり込んでから、初めて迎えた15日。


たまたまバイトが休みで家で寝ていると、引っ切り無しに、インターホンが鳴って、入れ替わり立ち替わり、封筒を渡しに人が訪ねてきた。


封筒の中には、お金が入っていて、しかも1枚に大体、福沢諭吉が5、6人はいる。


「大家さん、ってこと?」


「まあ、そんなところ。はい、キミも」


と言って、私に手を差し伸べてくる。


「まだ今月のバイト代入ってないから、もうちょっと待ってくれない?」


「ダメ、待てない」


「って言っても、払えないんだけど……」


「払えないなら、出てってもらいます」


「鬼か」


「鬼で結構」


結局、最初の月は、アゲハに借りて何とか凌いだんだっけ。



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